夫婦療法・家族療法とは

当カウンセリングルームでは、主に家族療法にて夫婦・カップルの支援を行っております。家族療法には多数の学派があります。ここでは、「システムズアプローチ」と「解決志向アプローチ」を紹介します。

システムアプローチ

システムとは、部分と部分が相互に影響を与え合っている全体のことです。また、相互作用のあり方でもあります。システムズアプローチでは、家族を一人ひとりの個別の人として見るよりも、システムを構成する要素という視点で見ます。

夫と妻は、お互いに影響を与え、お互いに影響を受けています。そうして、必要に応じて変化しながらもバランスを維持しています。子どもや親も同じです。人だけではありません。仕事や学校(などの地域社会)と家族は相互に影響を及ぼし合っています。

人間関係の問題が起こったとき、私たちには、原因を人に見出そうとする傾向があります。「原因→結果」の一方通行です。

「原因→結果」の一方通行

実際は、「原因(結果)⇄結果(原因)」のように、円環的に繰り返されています。

「原因(結果)⇄結果(原因)」

下図は、夫婦ケンカが円環的に繰り返される例です。

「原因(結果)⇄結果(原因)」の事例

システムのとらえ方

システムのとらえ方には大きく3つの視点があります。コミュニケーション、家族の構造、時間による変化の3つです。それぞれを説明します。

コミュニケーション

問題が起きると解決を試みます。ところが、その解決の試みが問題を維持させることがあります。時には問題を大きくすることもあります。

例を上げてみます。妻は夫の帰宅が連日遅いことに不満を募らせています。夫に「たまには早く帰ってこれないの?」と不満をぶつけます。夫が受け入れれば解決ですが、そうならないことがあります。以下のような展開です。

(遅くに帰宅して)「ああ、疲れた…」
「たまには早く帰れないの!?」
「忙しい時期だから仕方ないだろ」
「そんな言い方しなくてもいいでしょ!」
「いつも同じことを言うからだ!」
「あなたは、いつもそう!!」
「お前こそ、いつもうるさい!!」
(うるさく言われるのがイヤでさらに帰宅が遅くなる)「ああ、疲れた…」
「たまには早く帰れないの!?」

図にすると、円環的にくり返されていることが理解しやすいと思います。

コミュニケーションの悪循環

妻が「たまには早く帰って来れないの?」の代わりに、「お疲れさま。相談したいことがあるの。時間を作ってくれるとありがたいんだけど」と言えば、夫から返ってくる言葉は変わるかもしれません。

夫が「忙しい時期だから仕方ないだろ」の代わりに、「家のこと、全部しっかりやってくれて助かってる。今は忙しくて、平日にゆっくり話す時間を取るのがむずかしいけど、今度の休日は時間を作るので待ってくれる?」と言えば、妻から返ってくる言葉は変わるかもしれません。

このようにとらえて、変化のきっかけをどのようにして作るかを一緒に考えています。この場合むずかしいのは、どちらかが先にパターンを変えると、「妻に(または夫に)非があるから改めたのだ」と解釈しがちなことです。そのような誤解が生じないように、しっかり説明しながら慎重に進めます。

家族の構造

家族の構造とは、家族メンバー間の関係や家族における役割です。サブシステム・世代間境界・決定という3つのキーワードがあります。

サブシステムとは、家族システムの中の小さな単位です。夫婦(両親)サブシステム、祖父母サブシステム、兄妹サブシステムと言えばイメージしやすいと思います。家族の中心は夫婦(両親)サブシステムです。夫婦(両親)サブシステムのあり方が家族全体に影響します。

親子の間には適度な境界が必要です。子が親に秘密を持つのは自立への過程です。子への過干渉は子の(親にとっての)問題行動を引き起こすことがあります。結婚した子の家への実親の訪問頻度が高すぎるという不満は、夫婦カウンセリングでしばしば見られます。

決定とは、何かを決めるとき、誰が決めるのか、どのように決めるのかなど、家族・夫婦の決定のあり方です。夫婦で決めるべきことが、夫と姑で決めらるなど、決定がどのようになされているかに着目します。

時間による変化

発達心理学者のエリクソンは人生を8つの段階に分け、それぞれの段階における発達課題と、達成できないときに陥る危機を示しました。ライフサイクル論と言います。

家族にもライフサイクルがあります。1)独身の時期、2)新婚の時期、3)乳幼児を育てる時期、4)学童期の子どもを育てる時期、5)思春期・青年期の子どもを育てる時期、6)子どもの巣立ちの時期、7)老年期の7つの段階に分けられることが多いです。

個人のライフサイクルと同様に、それぞれの段階毎に発達課題があります。ライフサイクルの移行期は夫婦に求められる役割が変わります。子どもが生まれると親の役割が発生します。学童期になると地域社会との関わりが生じます。変化の時期は問題が起きやすくなります。

家族ライフサイクルについては、別の機会に詳しく紹介したいと思います。

システムに着目するから、お一人での来談にも対応できる

システムズアプローチでは、システムの要素はシステム全体に影響を及ぼし、システム全体はシステムの要素に影響を及ぼすという考え方をします。夫婦で例えると、夫(または妻)が変われば夫婦が変わります。夫婦が変われば妻(または夫)が変わります。このように考えるから、パートナーがカウンセリングに来なくても、カウンセラーは援助が可能になります。

解決志向アプローチ

解決志向アプローチとはブリーフセラピーの一つであり、ブリーフセラピーの主流となっている心理療法です。では、ブリーフセラピーとは何か。直訳すると短期療法です。

昔のカウンセリングは、週に3回から4回くらいのペースで数十回、数百回も行われていたそうです。お金と時間がなければ続きません。カウンセリングがお金持ちのステータスだったというのもうなずけます。

お金と時間の負担が大きすぎるため、短期間での終結が求められるようになりました(当たり前ですね)。アメリカの保険制度改定も短期を要求しました。ブリーフセラピーが誕生した背景です。

短期で終結するには効率的でなければなりません。もちろん、効果的であることが大前提です。ブリーフセラピーは、効果的かつ効率的な心理療法という意味で使われています。

ブリーフセラピーの一つである解決志向アプローチの特徴は、文字通り「解決志向」であることです。「問題解決志向」ではありません。言葉遊びみたいですね。ちゃんと説明します。

問題解決志向は「問題や原因」を突き止めて、それらを改善することによって解決に向かいます。代表は認知行動療法です。偏った思考と行動のパターン(原因)を変化させることによって解決に向かいます。

解決志向のキーワードは「資源」「解決像」です。

解決に役立つ資源(能力、長所、可能性など)に焦点を当て、それらを有効に活用することを追及します。問題の原因を考える代わりに、問題が消失した後の望む未来像を明確にしていきます。そこに向かうために必要なこと、そのために資源をどのように活用するかを考えていきます。

問題や原因をまったく扱わないわけではありませんが、「資源」に焦点を当て、どのように「解決像」を創り上げていくかに注力します。原因という過去より、解決像という未来に目を向けるカウンセリングと言えます。

必要性やリクエストに応じて、来談者中心療法・認知行動療法も行います

家族療法では夫婦・カップルシステムの相互作用に着目します。個人の内面を掘り下げることはあまりしません。解決志向アプローチは資源と解決像に焦点を当てます。問題や原因をあまり扱いません。

せっかくカウンセリングを受けるのだから、内面を掘り下げて自己理解を深めたいという方もいらっしゃいます。問題や原因にしっかり向き合いたいという方もいらっしゃいます。その考えは間違いではありません。解決に至る過程は人それぞれです。唯一の正解はありません。

内面を掘り下げ自己理解を深めたいという方には、来談者中心療法やフォーカシングによる支援を行います。問題や原因にしっかり向き合いたい方には、認知行動療法による支援を行います。

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