
執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士
離婚という言葉が頭をよぎるとき、それは必ずしも「離婚したい」という確固たる意思があるわけではありません。むしろ、今の関係性に何らかの違和感や苦しみを感じているサインかもしれません。
子どもがいる場合は特に、離婚についての不安や迷いが強くなるものです。子どもへの影響、経済面での心配、そして今後の生活のこと。悩みは尽きないかもしれません。
離婚カウンセリングは、そんなあなたの気持ちに寄り添いながら、より良い決断に向けてサポートする場所です。その決断は、必ずしも離婚とは限りません。夫婦関係の修復という選択肢もあります。大切なのは、あなたにとってより良い選択ができることです。
カウンセリングでは以下のようなサポートを提供しています。
1人でお越しになるケースばかりではありません。離婚するか否かで話し合いを続けている夫婦が、2人で話しても進まないからと、カウンセリングにお越しになるケースもあります。めずらしいケースではなく、むしろ多いくらいです。
離婚は人生の中でも特に大きな決断の一つです。離婚に直面する際には、さまざまな感情が押し寄せてきます。日常生活に支障をきたすこともあります。これらの感情に苦しむのはあなただけではありません。離婚が現実的な選択肢となったとき、ほとんどの人が経験する感情です。
多くの人が強い不安と恐怖を感じます。経済面、子どもへの影響、新たな生活環境への適応など、未来の不確実性から生じます。離婚が家族や友人、社会的な評判に与える影響についても、心配することが多いです。
特に子どもがいる場合、離婚が子どもに及ぼす影響を考えて葛藤します。「自分のせいで家族が崩壊する」「子どもに悪影響を与えてしまうのでは」という罪悪感が生まれやすくなります。これらの考えが生まれるということは、良い親である証拠とも言えますが、そのような気持ちになれないのはやむを得ないことです。
離婚を考える理由には、多くの場合、パートナーへの失望や怒りといった感情が存在します。不倫や価値観の不一致、長年にわたる意思疎通の行き違いなど、さまざまな問題が背景にあることがほとんどです。怒りが強くなると、冷静な判断が難しくなり、極端な結論を選択してしまうことがあります。
深い孤独や喪失を感じることもあります。長年共に過ごしてきたパートナーです。対立だけではなく情もあるはずです。別れを決断することは、人生の大きな部分を占めていた関係の喪失を意味します。加えて、離婚後の自分の生活のあり方が見えにくくなることで、喪失感が増幅することもあります。
どれだけ関係が悪化しても、再構築の可能性を捨てきれないものです。問題が解決できるかもしれない、再び良い関係を築けるかもしれないという思いは、「もう一度試みるべきか」「本当に離婚して良いのか」という迷いにつながります。このような葛藤は普通です。あなただけではありません。自分を責めないでください。
より良い決断に向かうためには、まず自分の気持ちと向き合うことです。カウンセリングでは、以下のようなプロセスを経ながら、心の整理をしていきます。
より良い関係性のための具体的な工夫を考えたり、新しい生活に向けての準備を検討したりします。特に子どもがいる場合は、子どもへの配慮について十分に時間をかけて考えます。
今の状況を客観的に見つめ直すところから始めます。自分の気持ちを言葉にし、パートナーとの関係について振り返ります。この作業は、時に痛みを伴うこともありますが、次のステップに進むために必要なプロセスです。
様々な感情を受け止めながら、なぜそう感じるのかを探っていきます。「こんな気持ちを抱いてはいけない」と自分を責めることなく、あるがままの感情と向き合います。
関係修復の可能性を検討したり、新しいコミュニケーション方法を学んだりします。必要に応じて、離婚という選択肢についても考えます。この段階では、できるだけ多くの可能性を視野に入れることが大切です。
カウンセリングは、パートナーとの関係性を新しい視点から見つめ直す機会にもなります。
お互いの気持ちや考えを伝え合う新しい方法を学びます。相手の立場に立って考えてみることで、これまで気づかなかった視点に出会うこともあります。また、建設的な話し合いの方法を身につけることで、より良い関係性への道が開けることもあります。
それぞれが大切にしているものを確認し合います。価値観の違いを認め合いながらも、共通点を見出すことで、新たな関係性を築くヒントが見つかることもあります。
カウンセリングでは、まず自分自身の内面を見つめ直します。思考や感情を言葉にすることで、自分の気持ちがより明確になっていきます。自分の気持ちへの理解が深まることで、新たな気づきが生まれ、それが決断への一歩となります。
離婚と再構築、それぞれの選択肢について、メリットとデメリットを具体的に考えていきます。一人で考えを巡らせているときには気づかなかった視点を得て、より現実的な判断ができるようになることがあります。
パートナーの考えや気持ちについて、理解を深めることも大切です。2人でカウンセリングに参加する場合、お互いの考えや気持ちを丁寧に聴いていく中で、「そんな風に考えていたのか」という新たな発見があることも少なくありません。
関係を修復する場合には、新しいコミュニケーションの方法や、お互いを尊重するための具体的な工夫を考えていきます。離婚を選択する場合には、新しい生活に向けての準備や、子どもへの配慮について考えていきます。
離婚の決断は、人生の中でも特に大きな選択の一つです。その過程で、様々な困難や苦痛を味わうことになるかもしれません。しかし、一人で抱え込む必要はありません。カウンセリングという場で、あなたの気持ちに寄り添いながら、より良い決断に向けてのサポートをさせていただきます。