夫婦カウンセリングを妻だけ・夫だけで

執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士

個人カウンセリングのシーン
妻または夫1人だけで受ける夫婦カウンセリング

「夫婦カウンセリングって、二人一緒でないとダメなんでしょうか」

そう思って、相談をためらっている方がいます。パートナーが乗り気でない、切り出せない、そもそも一人で整理してから話したい——理由はさまざまです。

結論からお伝えします。夫婦カウンセリングは、一人でも受けることができます。

夫婦カウンセリングを一人で受けられるのはなぜか

ブリーフセラピー・家族療法の視点では、問題は「二人の間で起きているパターン」にあると考えます。

パターンというのは、相互作用の繰り返しのことです。

妻が不満を伝える → 夫が黙り込む → 妻がさらに強く訴える → 夫がさらに閉じる

というような繰り返しです。このパターンのどこか一か所に変化が生まれると、全体が変わり始めます。

一人のカウンセリングでも、このパターンに働きかけることができます。 二人が同席していなくても、関係性にアプローチすることは可能です。

一人で来られる方の主な理由

パートナーに切り出せない・拒否されそう

夫婦関係がうまくいっていないときに「カウンセリングに行こう」と提案するのは、思った以上にむずかしいことです。「どうせ拒否される」「余計なことをするなと怒られそう」「提案すること自体でまたもめそう」——そういった不安があると、切り出せないまま時間が過ぎてしまいます。

こうした場合、まず一人で来ていただき、「どう提案するか」「一人でできることは何か」を一緒に考えることができます。

後に二人でお越しになった場合、いただいた情報は原則としてパートナーと共有されます。

夫婦カウンセリングが機能するには、カウンセラーは中立の立場でお二人に関わる必要があります。カウンセラーがパートナーに対する秘密を共有する形になってしまうと、中立性を損なうからです。

まず自分の気持ちを整理したい

「パートナーに何を伝えたいのか、自分でもよく分からない」という状態のまま二人でカウンセリングに来ても、うまく話せないことがあります。まず個人で自分の気持ちや考えを整理してから、二人でのカウンセリングに進む、という流れをとる方もいます。

自分のコミュニケーションを変えたい

「言い方が悪いのかもしれない」「相手の気持ちをうまく受け取れていないと思う」——自分自身のコミュニケーションパターンを変えたいという動機で来られる方もいます。関係の問題を「相手の問題」としてではなく、「自分が変わることで関係を変えたい」という姿勢で取り組みます。

関係の改善よりも、安定した生活を維持したい

「関係を修復したいというよりも、子どもが独立するまでの間、できるだけ穏やかに過ごしたい」という目標を持って来られる方もいます。カウンセリングの目標は「関係修復」だけではありません。それぞれの状況に合った目標を一緒に設定します。

カウンセラーから個人面接を提案するケース

二人での参加を希望していても、カウンセラーから個人面接をすすめる場合があります。

暴力・ハラスメントがある場合

身体的な暴力(DV)や精神的なハラスメントが現在進行中の場合、二人が同席するカウンセリングは状況を悪化させる懸念があります。この場合は、まずお一人でお越しください。安全の確保を優先しながら、今後の方針を一緒に考えます。

感情的な衝突が繰り返される場合

二人がそろうと、話し合いがすぐに激しい言い合いになってしまうケースがあります。そのような場合は、「妻の個人面接 → 夫の個人面接 → 合同面接」という順で進めることを提案することがあります。

それぞれが安全な場で気持ちを整理してから、二人でのセッションに移行する方が、結果的に建設的な対話につながることが多いためです。

一人で受ける夫婦カウンセリングでは何をするのか

状況の整理と目標の設定

まず、現在の夫婦関係の状況を整理します。「どんなことで困っているか」「いつ頃からそうなったか」「これまでどう対処してきたか」を聴きながら、今後どうなりたいのかという方向性を一緒に明確にしていきます。

「悪循環」を見つける

一人のカウンセリングでも、二人の間で起きているパターンを分析することができます。「相手がこうすると、自分はこう反応する。その反応に相手がこう返してくる」という繰り返しのパターンを、第三者の視点から整理していきます。

この「悪循環」が見えてくると、「どこを変えれば連鎖が断ち切れるか」が見えてきます。

自分の反応パターンを変える

悪循環の中で、自分はどのように反応しているか。その反応が、相手のどんな行動を引き出しているか。一人のカウンセリングでは、こうした自分の側のパターンに焦点を当て、「いつもと少し違う反応」を試みることができます。

解決志向アプローチ(SFA)では、「うまくいっていた時期」や「ケンカにならなかった場面」に注目します。「なぜうまくいったのか」を一緒に考えることで、日常の中に活かせるヒントが見えてきます。

パートナーへの伝え方を練習する

「どう伝えればもっとうまく伝わるか」「相手が怒らない言い方はあるか」という実践的なコミュニケーションのトレーニングも、個人面接の中で行います。伝えたいことを整理し、言葉を選ぶ練習をすることで、日常の会話が少しずつ変わっていきます。

実際の相談例

事例:「夫を連れてこられなかった」40代女性

夫婦関係が冷え切っていたAさん(仮名)は、夫にカウンセリングを提案することへの不安から、まずお一人で来られました。「夫は絶対に来ないと思う。でもこのままでは苦しい」というのが最初の言葉でした。

カウンセリングでは、まず「二人の間でどんな繰り返しが起きているか」を整理しました。Aさんの場合、「不満を感じると黙り込む → 夫が何があったか聞く → 言えずにいる →夫が諦めて別の部屋に行く → さらに孤独感が増す」という流れが繰り返されていることがわかりました。

Aさんはまず「黙り込む代わりに、一言だけ伝える」という小さな変化を試みました。最初はうまくいかないこともありましたが、3か月後には夫婦間の会話が少しずつ戻り始め、最終的には夫も一度カウンセリングに来てくれました。

よくある疑問

Q
一人でのカウンセリングでも、夫婦関係は変わりますか?
A

変わることがあります。関係は「二人のパターン」で成り立っているため、一人が変わると、相手の反応も変わり始めることがあります。もちろん保証はできませんが、「自分にできることをやる」という姿勢は、関係全体に影響を与えることが多いです。

Q
途中から二人で受けることはできますか?
A

できます。個人面接を続ける中でパートナーの気持ちが変わって、途中から合同面接に移行するケースもあります。その逆(合同から個人へ)も状況に応じて対応しています。

Q
カウンセリングの内容はパートナーに知られますか?
A

原則として、ご本人の許可なくパートナーに知られることはありません。守秘が優先されます。パートナーが後から「何を話したのか」と問い合わせてきても、ご本人の同意なく開示することはありません。

ただし、後にお二人での面接になる場合、カウンセラーがお二人の中立な立場でいるために、情報の共有について相談させていただきます。相談なくパートナーに開示することはありません。

特に理由(DV・モラハラ等)があって、パートナーに内緒にせざるを得ない場合はご相談下さい。

Q
パートナーに内緒で来ることはできますか?
A

できます。仮にパートナーからの問い合わせがあっても、お答えすることはありません。ただし、繰り返しになりますが、後に二人でお越しになる場合は、情報の共有について相談させていただきます。

迷っているあなたへ

「一人で行っても意味があるのか」と感じる方がいます。しかし、一人で問題を抱えたまま何も動かない状態よりも、一人でもカウンセリングを始めることで、関係が動き出すことは珍しくありません。

二人がそろわないとできないことはある一方で、一人だからこそできることもあります。まず、今の状況を安心して話せる場所を持つこと。それが最初の一歩になります。

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