
執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士
不登校・ひきこもりが起きると、当事者個人が問題であると見做されがちです。その状況がさらに当事者を追い込んで、問題を維持するパターンを固定してしまうことがあります。ブリーフセラピーは、個人に問題を求めない、悪者を作らない、人に優しいカウンセリングです。
不登校・ひきこもりでは、「そっと見守りましょう」「見守るだけでは変わらないから積極的介入を」「家庭の居心地が良すぎるかもしれない」「生活習慣の改善」等々の解決策が提示されます。
それらの解決策は、どれも正しいのだろうと思います。しかし、すべてのケースにおいて絶対的に有効なものは存在しないようです。なぜなら、
不登校・ひきこもりの原因は「特定できない」が実際のところだからです。
「特定できない」「わからない」原因探しに躍起になっても、いつまでも「特定できない」「わからない」を繰り返すことになりかねません。
本人、家族、関係者(学校など)は例外なく一生懸命、解決の努力をされています。しかし、その解決努力が逆に、問題を維持させていることがあります。
以下は不登校の子がいる家庭の会話の例です。
母と父の発言は、どちらも解決を目指してのものです。子も、親がヒートアップしそうになると、割って入って解決を図っていると捉えることができます。
このように、ブリーフセラピーのカウンセラーは、すべての行動を解決努力として肯定的に捉えます。解決努力が裏目に出て、問題を維持する悪循環に陥っていると捉えます。悪循環を良循環に変える介入を行って解決に向かいます。
人ではなく悪循環に介入するので、当事者本人が来談しなくてもサポート可能です。
不登校・ひきこもりのご本人は、目に見える姿は活動的とは正反対でしょう。しかし、心の中はフル回転して、常に高い疲労状態である場合がほとんどです。
同時に、ご家族も疲弊しています。相談に来られるご家族は、たくさん勉強されていて、既に様々なことをお試しになっています。中々うまくいかず、疲弊されている場合が少なくありません。
ご家族が元気でいることも解決のリソースになります。ご本人が来談できなくても悪循環への介入が可能であるとの同時に、ご家族の心のケアのためにもご利用いただければと思います。