
執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士
カウンセリングといえば「傾聴」を思い浮かべる人が多いかもしれません。人には自ら成長に向かう力があり、カウンセラーの役割はその力が発揮されるように関わることと考えます。その関わり方が傾聴です。
傾聴は「非指示的」カウンセリングです。指示やアドバイスを行いません。
提唱者のカール・ロジャーズは、人には自ら成長に向かう力を生まれながらに備えているとしました。カウンセラーの役割は、その力の発揮を支援することであり、支援のための関わり方が傾聴です。
カウンセラーは以下の3つの態度・姿勢でクライエントに関わります。
【無条件の肯定的配慮(受容)】
クライエントの思考、感情、行動などを否定することなく、背景などを肯定して受け入れるように聴く
【共感的理解】
クライエントの立場や考え、受け止め方などを理解
【自己一致】
クライエントとの関係において、カウンセラーが自分に正直であること
ロジャーズは理論や技法を明確に示しませんでした。オウム返しの理論と揶揄されることに嫌気がさして、理論より態度を語るようになったと言われています。現在では一学派というより、すべてのカウンセラーが備えておくべき態度として共有されています。
心理療法の効果要因を研究した有名な論文があります。この論文によると、カウンセリングの効果は以下のようになっています。
40%:治療外要因(クライエント要因、カウンセリング外の要因)
30%:治療関係要因(クライエントとカウンセラーの関係)
15%:希望やプラセボ
15%:心理療法の技法
Lambert, M.: Psychotherapy outcome research. Handbook of Psychotherapy Integration. Basic Book, NY 1992
カウンセリング外要因を除いて最も大きい要因はクライエントとカウンセラーの関係です。心理療法は15%にとどまります。○○療法にこだわるより、信頼関係を築けるカウンセラーに出会えることが大切なのかもしれません。
ただし、以上の論文には妥当性に欠けるという批判もあることを付け加えておきます。