浮気された夢を心理学的に分析してみた

執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士

浮気された夢の内容を語るクライエントと傾聴するカウンセラー

先日参加した同窓会で、「旦那に浮気された夢を見たのよ。浮気された夢って、心理学ではどのように分析するの?」と聞かれました。「夢分析は専門外なのでわからへんわー」としか答えられませんでした。

その人は占いが好きで、その夢を占ってもらったそうです。その場では「へえー、そうなんやー」で済ませたのですが、翌日になって、(個人的な興味で)聞いておけば良かったな、(その人は)聞いてほしかったのかなと思いましたが、すぐにその考えは消え去ってしまいました。

昨日、そのことをふと思い出して、「浮気された夢」でネット検索してみました。すると、ヒットするのは、ほとんどが「夢占い」によるものでした。心理学の理論に基づく「夢分析」の情報を見つけることはできませんでした。

それも当然です。そもそも「浮気された夢を見た」だけの情報で分析することはありません(占いも同じだと思いますが)。対話を通じて、その人の人生の文脈、最近の出来事、夢の詳細な状況などを丁寧に考慮し、分析を深めていく必要があるからです。

それで終わっても良かったのですが、夢分析の真似事をやってみたくなりました。それがこのブログです。

このページの内容は、夢分析の非専門家によるものであることをあらかじめご了承下さい。娯楽としてご覧いただければ幸いです。

前置きが長くなりました。

夢分析を主要なアプローチとする2つの学派

心理療法において夢分析を主要なアプローチとしているのは、精神分析学ユング心理学の理論に基づくカウンセリングを行う学派です。

どちらの理論も「無意識」に注目して、悩みを解決したり、より良く生きるためのヒントを探ったりするアプローチです。どちらも夢を「無意識」からのメッセージととらえます。ただし、無意識と夢のとらえ方に以下の違いがあります。

精神分析学

精神分析学は、オーストリアの精神科医ジークムント・フロイトが創始した理論です。人間の心は、意識できる部分はほんの一部で、自分では気づいていない「無意識」の部分が、私たちの行動や感情に大きな影響を与えていると考えます。

  • 無意識のとらえ方:抑圧された体験や欲求が格納される場所
  • 夢の解釈:抑圧された欲求や願望の表現

ユング心理学

名称通り、スイスの精神科医カール・グスタフ・ユングが創始した心理学の理論です。分析心理学とも呼ばれます。

ユングは個人の無意識に加えて、「集合的無意識」という概念を提唱しました。これは、人類共通の心の基盤となる部分で、世界中の神話や物語に共通して現れる「元型」という普遍的なイメージやパターンが存在すると考えました。

  • 無意識のとらえ方:意識を補うもの、個人の無意識と人類に共通する無意識の2つを想定
  • 夢の解釈:自己実現や心の成長のためのメッセージ

少し脇道

少し脇道に逸れます。フロイト以前の心理学は「意識」を研究の対象としていました。フロイトが心理学に「無意識」(の概念)を持ち込みました。


ユングはフロイトの著作に感銘を受けて手紙を送りました。そこから2人の関係が始まり、フロイトはユングを自分の後継者として期待するほどになりました。しかし、後に意見の相違が表面化して、2人は決別することになりました。

主な意見の相違は、無意識の理解の違いと理論的な焦点の違いがあげられます。

フロイトは無意識の中に主に性的な欲求や抑圧された感情があると考えていました。一方、ユングは無意識は個人の体験だけでなく、人類が共有する集合的無意識が存在し、そこに普遍的な元型があると主張しました。

また、フロイトは人間の行動や心の問題を性的な側面から説明しようとしましたが、ユングはそれだけではなく、宗教や神話、夢なども重要な意味を持つと考え、心のより広い側面に注目しました。


フロイト以降の心理学は、ざっくり言うとフロイトの理論を発展させる方向と批判・否定する方向の2つの流れに分かれました。批判・否定する方向の代表は、認知行動療法、人間性心理学の流れです。

一時期大流行したアドラー心理学はユング心理学と同様に、フロイトの理論の影響を受けて発展させつつも、独自の世界観を提示し、新たな方向性を示したものと言えます。

家族療法は以上のどれにも属しません。1950年代のアメリカで、主に統合失調症の研究から生まれました。家族を一つのシステムとして捉えること、コミュニケーションのパターンに注目するなどの特徴があります。

すべての心理学(心理療法)が他の学派とまったく関連がないわけではなく、相互に影響を与え合いながら発展しています。

「浮気をされる夢」をざっくりと解釈してみた

本論に戻ります。「浮気をされる夢」の解釈です。

精神分析学的に解釈してみた

精神分析学では、夢を「抑圧された無意識的な願望の表れ」と捉えます。この観点から、「浮気をされる夢」を以下のように解釈してみました。

不安や恐れを反映している

  • 関係への不安
    • 現実の関係における不安や、パートナーを失うことへの恐れが反映されている。
  • 裏切られることへの恐れ
    • 過去に裏切られた経験のトラウマが夢にあらわれている。
  • 自己価値の低さ
    • 「パートナーが自分よりも魅力的な人に惹かれるのではないか」という不安が夢に投影されている。

抑圧された感情があらわれている

  • 罪悪感
    • 夢を見た人自身が、パートナー以外の人に魅力を感じていたり、後ろめたい行動をしていたりする場合、その罪悪感が「浮気をされる」という形で夢にあらわれている。
  • 怒りや不満
    • パートナーに対して、何らかの不満や怒りを感じているが、それを現実で表現できずに抑圧している場合、夢の中で「パートナーに浮気をされる」という形で表出されている。

自己の変化や成長をあらわしている

  • 関係の変化への予感
    • パートナーとの関係が新たな段階へ移行する時期を示唆している。変化への不安や期待が混在した状態を反映している。
  • 個人の成長
    • 自分自身の成長や変化に伴い、パートナーとの関係性にも変化が生じることへの予感や準備が夢にあらわれている。

ユング心理学的に解釈してみた

ユング心理学では、夢は個人の無意識だけでなく、人類共通の無意識層とも関連していると考えます。この観点から、以下のように解釈しました。

異性的な側面の投影

ユングは、男性の無意識には女性的な側面が、女性の無意識には男性的な側面が存在すると考えました。この考えから、パートナーは、自分自身の異性的な側面を映し出す対象と解釈することができます。

「浮気をされる夢」は、自分自身の未熟さや、それに対する不安や恐れを反映しているとの解釈が可能になります。例えば、男性が自分の女性的な側面を受け入れられず、抑圧している場合、それが「パートナーの浮気相手」として夢に登場したという解釈ができます。

影(シャドウ)の投影

ユングは、個人が抑圧し、認めたくない自己の側面を「影(シャドウ)」と呼びました。

「浮気をされる夢」は、自分自身の影の部分をパートナーに投影していると解釈できます。例えば、自分自身が浮気をしたいという願望を抑圧している場合、その願望をパートナーに投影し、「パートナーが浮気をしている」という形で夢にあらわれているとの解釈です。

関係性の象徴

パートナーは、自分自身の内面を映し出す鏡のような存在とも考えられます。

「浮気をされる夢」は、パートナーとの関係性における問題や課題を象徴的にあらわしている可能性です。コミュニケーション不足、信頼関係の欠如、価値観の相違などが、夢の中の「浮気」という形であらわれているとの解釈が可能です。

お断り

以上は非専門家である私の解釈であることを改めて断っておきます。娯楽程度に考えて下さい。「カウンセラーのくせに不謹慎だ!」と感じられた方には謝罪するしかありませんが、ブログの削除まではしません。柔軟に考えていただければ幸いです。

夢の意味は、夢を見た人の個人的な経験、感情、現在の状況、文化的背景などによって大きく異なります。上記はそれらの情報がない状態で、ざっくり解釈したものです。

夢分析を含む実際のカウンセリングでは、例えば「配偶者が芸能人と浮気している夢を見ました」だけの情報で進めるようなことはしません。

同じ夢を見たとしても、AさんとBさんとでは、夢の意味が異なるはずです。それはAさんとBさんの置かれた状況や背景、個人的な経験などが異なっていたり、AさんとBさんの人柄やパートナーとの関係性の違いなど様々な要因によるものです。

本格的な夢分析をご希望される方は、精神分析学やユング心理学の理論に基づいたカウンセリングを行っている専門家に相談してください。

当カウンセリングルームでは、主に家族療法・ブリーフセラピーの理論・技法を用いて、夫婦・カップル関係の悩みや問題の改善・解決をサポートしています。主に対話から得た情報を通して、悩み・問題・相談者さんの状態や人柄などを客観的、心理学的に理解して、サポートを行います。

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