トラウマケアの研修を受けて(1)

トラウマケアの研修を受けて

昨年から今年にかけて、トラウマをテーマとする研修を受ける機会が増えています。去る6月7日(日)も、短期療法を学ぶ会京都のトラウマケアに関する研修に参加しました。

トラウマをテーマとする研修が増えている背景には、近年、心理支援の領域において、トラウマ・インフォームド・ケアという考え方が注目されているからだと思います。トラウマ・インフォームド・ケアとは、支援者がトラウマについての基本的な知識を持ち、クライエントの症状や行動の背景にトラウマの影響があるかもしれないと理解しながら関わる支援の枠組みです。

怒り、回避、過敏さ、疑い深さ、助けを求めにくい態度などは、表面だけを見ると「困った反応」に見えることがあります。しかし、その背景には、自分を守るための反応があるかもしれません。そう理解することで、支援のあり方は変わります。

トラウマとは

トラウマとは、圧倒されるようなストレス体験や、安全・安心が失われる体験によって負う心の傷のことです。

PTSD、つまり心的外傷後ストレス障害は、一般にはトラウマに関連する代表的な診断名として知られています。日本トラウマティック・ストレス学会では、PTSDについて次のように説明されています。

「実際にまたは危うく死ぬ、深刻な怪我を負う、性的暴力など、精神的衝撃を受けるトラウマ(心的外傷)体験に晒されたことで生じる、特徴的なストレス症状群のことをさします」

出典PTSDとは | 日本トラウマティック・ストレス学会 (令和8年6月10日(水)閲覧)

ただし、カウンセリングの現場で出会う心の傷は、必ずしもPTSDの診断基準にきれいに当てはまるものばかりではありません。

夫婦カウンセリングの現場でも必要になる視点

私は、PTSDと診断された方のカウンセリングを多く行っているわけではありません。

しかし、夫婦カウンセリングの現場では、パートナーの不倫・浮気によって、安全感や安心感が大きく損なわれた方とお会いすることがしばしばあります。信頼していた相手から裏切られる経験は、トラウマ相当の傷になることを日々体験しています。

そのため、夫婦関係のカウンセリングを行うにあたっては、トラウマの知識は必須です。

不倫・浮気によるフラッシュバックや心の傷については、以下のページで詳しく説明しています。

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心理教育が重要

トラウマケアにおいて、心理教育はとても重要です。

心理教育とは、症状や心の反応について、正しい知識を共有する関わりです。「教育」という言葉には、先生と生徒のような上下関係を感じさせる響きがあり、個人的には少し違和感もあります。ただし、実際のカウンセリングでは、クライエントの体験を尊重しながら、一緒に理解を整理していく大切な関わりです。

心理教育が重要なのは、症状に苦しんでいる方が、自分の反応を「おかしい」「弱い」「いつまでも立ち直れない自分が悪い」と受け止めてしまうことがあるからです。

トラウマ症状を呈している方の多くは、症状そのものに苦しむだけではありません。次のような不安や自責を抱えることがあります。

「このまま治らないのではないか」
「いつまでも苦しんでいる自分が悪いのではないか」
「もっと早く立ち直らなければいけないのではないか」

このようなときに、正しい知識に基づいて説明することには大きな意味があります。

「それだけのことが起きたのだから、今の反応は無理のないものです」
「意志や根性の問題ではありません」
「自分を責める必要はありません」
「回復には時間がかかることがあります」

このように伝えることは、単なる慰めではありません。自分に起きている反応を理解し、自分を責める気持ちを少しゆるめ、安心を取り戻していくための支援です。

症状の意味がわからないままだと、人はさらに不安になります。反対に、「なぜこの反応が起きているのか」「自分に何が起きているのか」が少しでも理解できると、症状との向き合い方が変わります。

そのため、心理教育は、安心・安全を回復するための土台になる関わりです。

研修で確認できたこと

今回の研修は、新しい知識を得るというよりも、私が普段のカウンセリングで大切にしていることを確認する機会になりました。

心の傷を負った方に対して、

「あなたの反応はおかしくありません」
「それだけ傷つく出来事だったということです」
「すぐに元通りになれなくても当然です」
「自分を責める必要はありません」

と伝えること。

これは、症状の意味を理解し、安全感と安心感を少しずつ回復していくための大切な支援です。その理解があることで、クライエントは「自分がおかしいのではない」「自分が弱いのではない」と受け止めやすくなります。

言葉の伝え方を磨くこと

今回の研修で得た収穫の一つは、クライエントが理解しやすいであろうメタファー、つまり比喩の例に触れられたことです。

研修では、講師が実際の臨床で行っていると思われる心理教育の具体的な説明例が示されました。内容としては、私が普段のカウンセリングで行っていることと大きく変わりません。しかし、クライエントに伝わりやすい比喩表現の使い方がとても巧みでした。

正しい知識を伝えることは大切です。しかし、専門的な知識を専門家の言葉のまま説明しても、クライエントに十分伝わるとは限りません。特に、不安が強い方、自分を責めている方、安心感を失っている方には、「自分のこととして理解できる言葉」に置き換えることが重要です。

そのためには、一つの説明だけでなく、クライエントに応じて複数の伝え方を持っておくことが望ましいと感じました。同じ内容であっても、ある人には理論的な説明が届きやすく、別の人には日常的な比喩のほうが届きやすいことがあります。

今回の研修は、心理教育の内容だけでなく、それをどのような言葉で伝えるかを改めて考える機会になりました。

今回は全5回の研修の初回でした。次回も楽しみです。

この投稿の執筆者
山崎 孝

大阪を拠点に、ブリーフセラピー(短期解決型カウンセリング)と家族療法を主軸に、夫婦・カップルの問題解決をサポートしています。開業して15年になります(2026年現在)。カウンセリング経験は延べ9,000回を超えました。

自身も夫婦関係に困難な時期を経験したことがあり、その経験が来談者の苦しみへの理解につながっていると感じています。理論だけでなく、当事者としての視点からも、来談者の苦しみに向き合うことを大切にしています。

・公認心理師
(第36732号:厚生労働省)
・ブリーフセラピスト・ベーシック
(B00196号:国際ブリーフセラピー協会)

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