不倫・浮気の心の傷を癒す

執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト

不倫された心の傷

パートナーの不倫・浮気が発覚してから、気持ちが落ち着かない日々を過ごされていると思います。怒りが収まったと思ったら悲しみが押し寄せる。許そうとしても許せない自分に疲れている。「いつになったら楽になれるのか」という問いが、頭から離れない方も多いです。

その傷は、あなたが思っている以上に深いものです。そして、深いからこそ、回復には時間とプロセスが必要です。このページでは、不倫・浮気による心の傷がどこまで広がるのか、そして回復はどのように進むのかをお伝えします。

心の傷はどこまで広がるのか

傷つけた側と傷ついた側で異なる認識

不倫・浮気による心の傷は、発覚した瞬間の衝撃にとどまりません。過去・現在・未来の3つの方向に広がります。傷つけた側がこの広がりを理解しているかどうかが、回復の速さを大きく左右します。

過去の傷

不倫・浮気は、現在だけでなく、過去の思い出にも影を落とします。それまで幸せだと感じていた出来事が、後から振り返ったときに痛みや疑念と結びついてしまうことがあります。

  • 悲しみ:大切なもの(一緒に過ごした時間や体験)を失った。
  • 怒り:裏切られていた。尊厳を踏みにじられていた。
  • むなしさ:これまでの夫婦、家族の時間や体験は何だったのか。
  • 無価値感:自分に価値がないから裏切られたのか。
  • 恥ずかしさ:自分だけが裏切りに気づいていなかった。

現在の傷

多くの人が大きなショックと混乱を経験します。これまで普通にできていたことがむずかしく感じられるようになります。

  • 混乱:何を信じれば良いのかわからなくなる。
  • 怒り:いくら謝られても納得できない。
  • 不信:今も続いているのでは。隠し事があるのでは。
  • 孤独:誰もこの気持ちを理解してくれない。
  • 焦り:早く立ち直らなければ生活に支障が生じる。

未来の傷

これからの人生に対する見通しや希望にも深い影響を与えます。未来を思い描くことが怖くなったり、再び誰かを信じることに強い抵抗感を持つようになったりすることがあります。

  • 怖れ:また裏切られるのでは。
  • 不安:もう一度裏切られたら立ち直れないだろう。
  • あきらめ:期待しても、どうせまた裏切られるのだろう。
  • 迷い:再構築すべきか、離れるべきか決めきれない。
  • 孤独:関係を続けても、心が通い合わない未来が見える。
  • 自己否定:許そうとしても許せない自分が嫌になるかもしれない

不倫・浮気による心の傷は「今この瞬間」だけの問題ではありません。過去・現在・未来にわたって影響を及ぼす深いものであり、その痛みを理解し、ケアしていくことがとても大切です。

以下は「過去・現在・未来の傷」を動画にまとめたものです。

心の傷がもたらす影響

心の傷は、感情だけでなく、生活全般に影響を及ぼします。

トラウマ症状

不倫・浮気による傷は、しばしばトラウマ(心的外傷)症状を引き起こします。「関係性トラウマ」「裏切りトラウマ」という言葉で表現されることもあります。

フラッシュバック・侵入思考・過覚醒などが代表的な症状です。これらの症状のメカニズムと対処法については、以下のページで詳しく解説しています。

対人関係への影響

思考と感情が否定的になる

私たちは通常、自分自身・周囲の人・社会全般に対して、概ね信頼して大丈夫だという感覚を持っています。しかし、パートナーの裏切りは、その感覚を大きく揺さぶります。

自分への信頼が揺らぐ

多くの人に、「裏切られたのは自分に魅力がないからだ」という自己否定感が見られます。自己肯定感(自分の価値を信じる感覚)が著しく低下することがあります。

「私は誰と結婚したのだろう?」「そのような人をパートナーに選んだのは自分」といった言葉を口にする人も少なくありません。

他者への信頼が揺らぐ

最も近くて信頼すべきパートナーに裏切られた経験は、人間関係全般において、他者を信頼することへの恐れを生みます。これは、新たな傷を負わないための防衛的な反応です。

「二度と裏切らないから安心して」と言われても、その逆の事実が起きました。信頼して更に傷つくことを避けたくなる心理はよく理解できますし、その姿を見ている私も、かける言葉が出てこないこともあります。

社会への信頼が揺らぐ

自分や他者への信頼感は、社会に対する見方に影響を与えることがあります。

「いつ、どこで、何が起こるかわからない」という不安定な感覚が常につきまとう感覚になる人もいます。明るい未来を描けなくなる人、暗い未来しか描けなくなる人もいます。

これらも防衛的な反応です。期待しなければ裏切られることはありません。最悪のケースを想定していれば、それが起きてもダメージが小さくなると考えるのもやむを得ないと思います。

身体への影響

生活全般に影響を及ぼす

心の傷は身体にも影響が出ることがあります。

  • 眠れない、夜中に目が覚める
  • 食欲がなくなる、または食べすぎてしまう
  • 頭痛・胃痛など原因の分からない身体的不調
  • 慢性的な疲労感

これらは「気のせい」ではありません。神経系が慢性的な緊張状態にあるために起きる反応です。症状が続く場合は、医療機関への相談も選択肢のひとつです。

生活全般への影響

仕事では集中力や生産性が低下します。そのことで自責感が生まれ、自己肯定感がさらに低下することがあります。

対人関係では、他者と共有しにくい出来事のために社会的に孤立しやすくなります。家族や友人に話すと「別れなさい」と一方的に言われて更に苦しくなり、親しい人間関係からも距離を置くことがあります。

子育てでは、親の不安定さが子どもに伝わり、子どもの情緒が不安定になることがあります。

なぜ同じことを繰り返し聞いてしまうのか

不倫・浮気の発覚後、「なぜ何度も同じことを聞いてしまうのだろう」と自分を責める方がいます。しかしこれは、心の回復に必要な自然なプロセスです。

繰り返し質問する背景には、以下の5つの心理的機能があると考えられています。

出来事を理解するため

衝撃的な体験は、すぐには全体像を把握できません。断片的な情報を少しずつ統合するために、同じ質問が繰り返されます。

信頼しても大丈夫かの確認

信頼が崩れた後、人は相手の発言の一貫性を確認しようとします。「前と言っていることが矛盾していないか」を確かめることは、信頼回復の前提条件として自然な反応です。

コントロール感を取り戻そうとする試み

「いつから始まったのか」「今も続いているのか」という不確実性は、強いストレスになります。情報を増やして不確実性を減らそうとすることは、コントロールを取り戻そうとする試みです。

安全の確認

相手の反応・表情・説明の変化を観察することで、「再発の兆候がないか」を確認しています。これはトラウマ後の過覚醒(過度に警戒した状態)の一部です。

感情の理解を求める

質問のように見えて、実際には「自分の痛みを分かってほしい」という訴えであることが多いです。事実の説明だけでは満足されない場合、求めているのは共感と責任の引き受けです。

不倫という裏切りは、被害者にとっての「世界(人生やパートナー)は安全で予測可能なものである」という前提(基本的な信頼感)を根底から破壊します 。同じ質問を繰り返すことは、崩壊した世界を、より確実で予測可能なものへ作り直そうとする必死の取組と定義できます。

傷つけた側にとって重要なのは、質問の回数より回答の質です。防衛せず、相手の感情を理解しようとする応答が、信頼回復を最も強く予測することが研究で示されています。

回復はどのように進むのか

不倫・浮気からの回復には、段階があります。多くのカップルは次のような5つのプロセスをたどります。

衝撃・危機

第1段階は衝撃・危機です。発覚直後の時期で、怒り・悲しみ・不信が強く現れます。フラッシュバックや睡眠障害が起きることも多く、「何が起きたのか理解できない」という状態が続きます。

何が起きたのかを理解しようとする

第2段階は意味探索です。衝撃がやや落ち着くと、「なぜ起きたのか」を理解しようとします。何が起きたのかがわからない状態では、人は中々前を向けないものです。何度も同じ質問をするのは、この段階に特徴的な反応です。

感情の処理

第3段階は感情の処理です。怒り・恐怖・喪失感・屈辱・自己価値の揺らぎが深く表出します。パートナーに強い感情をぶつけたり、逆に突き放すような言動をしたり、接近と回避の葛藤(近づきたいのに怖い、という相反する気持ち)が強くなる時期でもあります。

信頼の再構築

第4段階は信頼の再構築です。関係を継続する場合、行動の積み重ねによって信頼を少しずつ回復していきます。この段階は数か月から数年かかることがあります。

統合

第5段階は統合です。出来事が二人の歴史の一部として、過去のこととして受け止められるようになり、新しい関係像が形成されていきます。

カウンセリングの現場でよく見られるのは、夫婦が異なる段階にいることです。

被害を受けた側がまだ第1・2段階にいるとき、傷つけた側は「もう終わったことだ」と第4・5段階に進もうとすることがあります。このズレが「全然理解してくれない」「まだ責め続けるのか」という衝突を生みます。

現在どの段階にいるのかを共有することもカウンセリングにおける重要なサポートの一つです。

傷を癒すために必要なこと

傷つけた側がパートナーの心の傷を癒す取り組みとして、「傷の大きさ・深さ・意味を理解する」「不安を和らげるために行動を変える」「謝罪の構造を理解する」「感情を受け止める」の4つを提示します。

傷の大きさ・深さ・意味を理解する

心の傷の大きさは、傷つけた側の予想をはるかに上回ることが多いです。その不一致が、回復を妨げる最大の要因のひとつです。

心の骨折と考えるとわかりやすいかもしれません。骨がくっついていないのに走ることはできません。傷の深さを理解し、それを言葉にして伝えることが、回復の土台になります。

不安を和らげるために行動を変える

傷ついた側は、大きな不安を抱えながら毎日を過ごしています。どのような行動変化が必要かは、独りよがりで決めてはいけません。パートナーと話し合って決めます。

できない約束をすべきではありません。約束を守れなければ、それが新たな傷になります。とはいえ、一定の行動変化を受け入れることは避けられないでしょう。

謝罪の構造を理解する

謝罪の質が回復を左右します。研究では、効果的な謝罪には次の6つの要素があるとされています。

  • 責任の明確化:「あなたが苦しんでいるのは私の行動が原因です」
  • 後悔の表明:「あなたをこんなに傷つけたことを本当に後悔しています」
  • 被害の理解:「信頼を裏切られたと感じるのは当然だと思います」
  • 説明:何が起きたのかを伝える(言い訳ではなく理解のための説明)
  • 再発防止:行動を変える具体的な意思表示
  • 修復行動:カウンセリングを受けるなど、関係修復のための具体的な取り組み

特に重要なのは「責任の明確化」「被害の理解」「再発防止」の3つです。これらが欠けると、謝罪は形式的なものとして受け取られます。

感情を受け止める

傷ついた側が強い怒りや悲しみをぶつけてくることはめずらしくありません。それが頻繁に、長時間にわたることもあります。

これらは傷が癒えていくために必要なプロセスです。逆ギレや怒りで対抗すると、新たな傷を与えてしまいます。しかし、強い感情をぶつけられ続けると、受け止め続けることが困難になります。そのようなときにカウンセリングが役立ちます。

カウンセラーは、語られた言葉の行間にある、まだ言葉にされていない気持ちを言語化するサポートを行います。お互いの理解が深まる経験を積み重ねることによって、傷の癒しが進んでいきます。

こんな状況の方が相談に来ています

次のような状況でご相談に来る方が少なくありません。

発覚からしばらく経っても、気持ちの整理がつかない方。パートナーが謝罪しているのに許せない自分に疲れてしまっている方。同じことを何度も話し合っても堂々巡りで、前に進めない感覚がある方。再構築するかどうか、まだ決めきれていないけれど、一人で抱え込むのが限界だと感じている方。

「こんなことで相談していいのか」と迷いながら連絡して下さる方も多いです。迷っている段階でも、相談に来ていただいて構いません。

最後に

「これだけの傷を負って、再構築は可能でしょうか」と聞かれることはめずらしくありません。その問いには「可能です」と答えます。実際、不倫・浮気を経験した多くの夫婦が関係を継続しています。中には、以前より深い理解と信頼を築いたという例もあります。

ただし、回復には時間がかかります。病気と同じように、早期に適切なサポートを受けることが、回復を早める確かな方法です。一人で、あるいは夫婦だけで抱え込まずに、専門家のサポートを活用して下さい。

カウンセリングは、答えを出す場所ではありません。感情を整理し、これからどうするかを一緒に考える場所です。お一人でのご相談も受け付けています。オンラインでのご相談も可能です。

参考文献

  • Freyd, J. J., & Birrell, P. J. (2013). Blind to Betrayal. Wiley. 邦訳:フレイド, J. J.・ビレル, P. J.(定延由紀 訳)(2015).人はなぜ裏切りに目をつぶるのか――心の奥では知っているのに自分をだます理由.亜紀書房. (様々な裏切りに共通する心理を裏切りトラウマ理論で説明)
  • Snyder, D. K., Baucom, D. H., & Gordon, K. C. (2007). Getting Past the Affair. Guilford Press. (不倫後の回復プロセスを段階的に整理)
  • Lewicki, R. J., Polin, B., & Lount, R. B. (2016). An exploration of the structure of effective apologies. Negotiation and Conflict Management Research. (謝罪の効果を左右する6つの要素を分析した研究)
  • ハーマン, J. L.(中井久夫 訳)(1996).心的外傷と回復.みすず書房. 原著:Herman, J. L. (1992). Trauma and Recovery. Basic Books. (トラウマとその回復を体系的に描いた世界的な標準書)
  • ヴァン・デア・コーク, B.(柴田裕之 訳)(2016).身体はトラウマを記録する――脳・心・体のつながりと回復のための手法.紀伊國屋書店.  原著:van der Kolk, B. (2014). The Body Keeps the Score. Viking. (脳と身体からトラウマを理解するトラウマ研究)
  • 白川美也子(監修)(2019).トラウマのことがわかる本――生きづらさを軽くするためにできること.講談社.
  • 白川美也子(著)(2016).赤ずきんとオオカミのトラウマ・ケア――自分を愛する力を取り戻す〔心理教育〕の本.アスク・ヒューマン・ケア.

このページの執筆者
山崎 孝

開業15年、延べ9,000回以上のカウンセリング経験を持つカウンセラー。大阪を拠点に、ブリーフセラピー(短期解決型カウンセリング)と家族療法を主軸に、不倫・浮気、セックスレス、コミュニケーション改善など夫婦・カップルの問題解決をサポートしています。

自身も夫婦関係に困難な時期を経験したことがあり、その経験が来談者の苦しみへの理解につながっていると感じています。理論だけでなく、当事者としての視点からも、来談者の苦しみに向き合うことを大切にしています。

公認心理師(第36732号:厚生労働省)
ブリーフセラピスト・ベーシック(B00196号:国際ブリーフセラピー協会)

カウンセラーの詳しいプロフィール

山崎 孝をフォローする
タイトルとURLをコピーしました