【セックスレス】妻が拒否する理由

「パートナーのことは好きなのに、求められると気持ちが動かない」——そんな状況に、後ろめたさを感じている方もいるかもしれません。

あるいは、誘ってもいつも断られてしまい、何が原因なのかわからないまま時間が過ぎている方もいるでしょう。

このページでは、妻がセックスを拒否する背景にある心理と関係性のパターンを、ブリーフセラピーの視点から解説します。

妻がセックスを拒否する理由

古いデータではありますが、、2017年に一般社団法人日本家族計画協会が実施した「第8回 男女の生活と意識に関する調査」によると、婚姻関係にある女性がセックスに積極的になれない理由で最も多いのは「面倒くさい」(22.3%)でした。次いで「出産後何となく」(20.1%)、「仕事で疲れている」(17.4%)が続きます。

「面倒くさい」という言葉だけを見ると、相手への関心がなくなったように受け取られるかもしれません。しかし、その背後には、身体的な疲労、心理的な負担、夫婦関係のすれ違いが隠れていることがあります。

表面的な言葉だけで判断するのではなく、その奥にある感情や関係性のパターンを理解することが、セックスレス改善の入口になります。

<参照>
一般社団法人 日本家族計画協会
機関紙「家族と健康」第756号

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身体的な理由

身体的な疲労や不快感は、性欲を低下させる直接的な要因です。

  • 仕事・家事・育児の重なりによる慢性的な疲労
  • 産後のホルモン変化による性欲の低下
  • 出産後の身体的な回復の途中
  • 性交時の不快感・痛み

特に産後の女性の身体は、まだ回復の途中にあります。

胎盤が剥がれた後の子宮の状態について、SNSなどでは「交通事故で内臓を損傷した状態と同程度の重傷」と表現されることがあります。医学的な比較としては個人差があり、そのまま受け取ることはむずかしいですが、産後の身体に大きな負担がかかっていることは確かです。

痛みや不快感、疲労が残っている状態で、セックスに応じることがむずかしくなるのは自然なことです。それは、相手への愛情がなくなったということではなく、身体と心がまだ回復を必要としている状態だと理解することが大切です。

また、産後はホルモンの変化や睡眠不足、育児による緊張などによって、性欲が低下することもあります。これは本人の意志や努力の問題ではありません。無理に応じようとすると、痛みや苦痛だけでなく、夫婦関係への負担が大きくなることもあります。

痛みや不快感が長く続く場合は、婦人科に相談することが役立つ場合があります。夫にできることは、セックスを求める前に、まず妻の身体の回復、気持ち、疲労の状態に関心を向けることです。夫婦の親密さは、相手の状態を尊重するところから回復していきます。

心理的な理由

慢性的なストレスや心理的な疲弊も、性欲を低下させます。

仕事の負荷が高いとき、不安や心配ごとが続くとき、あるいは自分に自信を持てない状態のとき——こうした心の状態は、性的な関心を後退させます。

また、感情的なわだかまりや、満たされない気持ちが積み重なっているとき、性行為そのものが「楽しくない」「応じるのがつらい」と感じられるようになることもあります。

夫のペースや行為への不満が、言葉にされないまま蓄積しているケースも少なくありません。

この場合、セックスを拒否しているように見えても、実際には「今の関係性の中では応じる気持ちになれない」という状態が起きていることがあります。

関係性の問題

心理的な理由と深く重なりますが、ふたりの関係性の問題が、セックス拒否としてあらわれていることがあります。

夫婦間の感情的なすれ違い、話し合いがうまくできない状態、不満やわだかまりが解消されないまま続いている状態——こうした関係性の問題が背景にある場合、性行為の有無は「関係性の問題の結果」として現れています。

妻の疲労についても、夫が想像する疲労と、妻自身が感じている疲労は異なることがあります。

身体的な負担が大きくても、パートナーに理解されている実感があれば、心理的な疲労は軽くなることがあります。反対に、「自分の大変さをわかってもらえていない」と感じている相手から求められると、それだけで強いストレスになることがあります。

たとえば、家事や育児の負担が偏っている、感謝やねぎらいが少ない、話し合ってもわかってもらえない。このような状態が続くと、妻にとってセックスは親密さの表現ではなく、「さらに応じなければならない負担」と感じられることがあります。

つまり、問題は性欲だけにあるとは限りません。日常生活の中での不満、寂しさ、怒り、諦めが、性的な距離としてあらわれていることがあります。

カウンセリングの現場では

身体的な問題や機能的な問題が見当たらない場合、カウンセリングでは、妻がセックスを拒否する状態を「妻側の問題」として扱いません。ふたりの関係性のパターンとして捉えます。

よく見られる悪循環のひとつは、次のようなものです。

夫が誘う
→ 妻が断る
→ 夫が傷つく
→ 夫が誘いにくくなる
→ しばらく距離を置く
→ 意を決してまた誘う
→ 妻がプレッシャーを感じる
→ 応じられない・拒否する

この悪循環が起きている場合、誘い方だけを工夫しても、同じパターンが繰り返されることがあります。

夫は「どう誘えばよいのか」と考えます。妻は「また求められるのではないか」と身構えます。その結果、ふたりの間に緊張が生まれ、自然な親密さがさらに失われていきます。

これは、解決しようとする試みが、かえって問題を維持してしまう悪循環です。ブリーフセラピーでは、このような状態を「偽解決」と呼びます。偽解決とは、解決のために行っているはずの行動が、結果的に問題を長引かせたり、強めたりしている状態を指します。

カウンセリングでは、まずこうした悪循環を見つけ、断ち切ることを大切にします。同時に、「うまくいっている瞬間」や「問題が少しマシだった瞬間」にも注目します。

ブリーフセラピーでは、このような瞬間を「例外」と呼びます。例外とは、問題がいつもより弱まっていた場面や、少しでも望ましい状態に近づいていた場面のことです。

たとえば、次のような場面です。

  • 共感的な会話ができた日の夜は、少し気持ちが近かった
  • 夫が家事や育児に主体的に関わっていた時期は、スキンシップを取りやすかった
  • 旅行など、日常から離れた場面では気持ちが動いた
  • セックスを求められない時間があったことで、安心して一緒にいられた

こうした例外の瞬間は、関係が変わり始めるための手がかりです。

原因を追いかけるだけでなく、「どのようなときに少しでもうまくいっているのか」を見つけることで、変化の方向が見えやすくなります。カウンセリングでは、そのような視点から、ふたりに合った変化の起こし方を一緒に考えていきます。

まとめ

妻がセックスを拒否する背景には、身体的・心理的な要因に加え、ふたりの関係性の問題が絡み合っていることが多いです。

「拒否」という行動だけを見ると、拒否している側の問題に見えるかもしれません。しかし実際には、疲労、痛み、ストレス、感情的なわだかまり、夫婦間のすれ違いなどが重なっていることがあります。

大切なのは、「どちらが悪いか」を決めることではありません。ふたりの間で、どのようなやりとりが繰り返されているのかを見ることです。

たとえば、夫が何とかしようとして誘うほど、妻がプレッシャーを感じて距離を取る。妻が距離を取るほど、夫は傷つき、さらに誘い方に悩む。このような悪循環が起きている場合、必要なのは相手を責めることではなく、ふたりの間に起きているパターンを少し変えていくことです。

また、セックスレスの改善は、必ずしも性行為をすぐに再開することから始まるわけではありません。安心して話せる時間を増やすこと、日常の負担を見直すこと、責め合いを減らすこと、プレッシャーのない関わりを取り戻すことなど、小さな変化が関係性を動かすきっかけになることがあります。

一人で、またはふたりで抱え込まず、専門家に相談することも選択肢のひとつです。カウンセリングでは、夫婦の関係性のパターンを一緒に整理しながら、今できる小さな変化から始めるサポートを行っています。

この投稿の執筆者
山崎 孝

大阪を拠点に、ブリーフセラピー(短期解決型カウンセリング)と家族療法を主軸に、夫婦・カップルの問題解決をサポートしています。開業して15年になります(2026年現在)。カウンセリング経験は延べ9,000回を超えました。

自身も夫婦関係に困難な時期を経験したことがあり、その経験が来談者の苦しみへの理解につながっていると感じています。理論だけでなく、当事者としての視点からも、来談者の苦しみに向き合うことを大切にしています。

・公認心理師
(第36732号:厚生労働省)
・ブリーフセラピスト・ベーシック
(B00196号:国際ブリーフセラピー協会)

カウンセラーの詳しいプロフィール

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