「スマホをチェックしてしまう」
「帰りが遅いと不安で仕方がない」
「相手の行動をすべて把握していないと落ち着かない」
パートナーの不倫が発覚した後、このような行動を取ってしまう自分に困惑する方は少なくありません。「こんなことをしている自分が嫌だ」「離婚しないと決めたのに、相手を信じられない自分が情けない」と自分を責めてしまうこともあります。
しかし、これらの行動は決して「おかしなこと」ではありません。むしろ、とても自然で理解できる心の反応です。
なぜなら、パートナーの不倫は、トラウマ体験となることが多いからです。冒頭に記した反応は、極度の不安によるトラウマ反応であり、自然な反応であると捉えることができます。
外傷体験によって、様々な心理的反応が生じる。これらの反応をトラウマ反応と呼ぶが、トラウマ反応は、異常な体験ではなく、極度の危険に巻き込まれた人ならば誰にでも生じる反応であり、「異常な状況に対する正常な反応」と考えられている。
第2章 心のケア 各論:文部科学省 (令和7年9月22日閲覧)
「自分の人生をコントロールできない」感覚が強くなる
不倫の発覚は、多くの場合、次のような体験を伴います。
これらの体験によって、「自分の人生をコントロールできない」という感覚を強く持つことになります。
パートナーの不倫・浮気によって負う心の傷は、コントロール感の喪失以外に様々ものがあります。以下のページにて詳しく説明しています。
参考ページ:不倫・浮気された心の傷を癒す
なぜパートナーの行動を把握しようとするのか
パートナーの行動を把握する目的には以下のようなものがあります。これらは、失ったコントロール感を取り戻そうとする自然な反応です。
これらは、再び傷つくことを防ごうとする、とても人間らしい反応といえます。あなたの心は、自分を守ろうと懸命に働いているのです。
パートナーの行動を把握するための方法
以下のような方法が用いられます。
これらの行動の根っこにあるのは「もう二度と騙されたくない」「安心したい」という切実な気持ちです。
当然の反応ですが・・・
まず、このことを強くお伝えしたいと思います。あなたの反応は当然のことです。
パートナーに何の問題もないときに上記を行うのであれば、それは正常とは言い難いですが、不倫という異常な出来事が起きたときに、異常な反応をしてしまうのは、正常とも言えます。
この反応は、深い傷を負った心が自分を守ろうとする自然な働きです。多くの方が同じような体験をされています。
ただし、夫婦関係を続けていくのであれば、いつまでもこれらの行動を続けるわけにはいきません。
不倫をしたパートナーが再構築の努力を行うことが前提ですが、傷が癒えるにつれて、これらの行動は自然に弱まっていきます。今はまだその時期ではないかもしれませんが、時間とともに状況は変化していくことを知っておいてください。
結論を急がない
不倫発覚後、多くの方が「この関係を続けるべきか、離婚するべきか」で悩まれます。どちらの選択も、コントロール感を取り戻すための方法として理解できます。
発覚直後は心が混乱している状態です。重要な決断は、少し落ち着いてから行うことをお勧めします。
心が混乱している状態のとき、人は極端な選択をする傾向があります。抑うつ状態では、重要な決断を避けるべきと言われるのはこのためです。
参考ページ:離婚カウンセリング
不倫してパートナーを傷つけた方へ
この行動は永続的なものではありません。傷が癒えるにつれて、このような行動は自然に弱まっていきます。
パートナーのこのような反応は、あなたの行動によって生じた当然の結果です。「いつまで続くのか」「もう許してもらえないのか」と思うかもしれませんが、これは一定期間続くものと受け入れる必要があります。
この状態はすぐには終わりません。あなたの対応や背景(これまでの夫婦の関係性など)によって期間は異なりますが、数ヶ月から1年以上続くこともめずらしくありません。パートナーが安心を取り戻すまでには時間が必要です。
不倫した側に必要なこと
パートナーの傷の理解とケア
不倫をした側の方に知っていただきたいのは、パートナーが負った傷の深さです。
理解すべき傷の実態 ・信頼の基盤が根本から崩れた状態 ・自分の価値や魅力への深い疑い ・未来への不安と絶望感
これらの傷は「時間が解決する」というものではありません。適切なケアが必要です。
行動制限を受け入れる
パートナーからの監視や行動制限は、今のあなたには不自由に感じるかもしれません。しかし、これには以下の意味があります。
「なぜここまでしなければならないのか」ではなく、「パートナーがそれを必要としている」という視点で受け入れることが大切です。
継続的なケアの重要性
傷の回復には時間がかかります。一度謝ったからといって、すべてが解決するわけではありません。むしろ、「もう謝ったのだから」という姿勢は、状況を悪化させます。
参考ページ:不倫・浮気された心の傷を癒す
専門的サポートの提案
一人で抱え込まないために
不倫発覚直後の混乱期は、一人で対処するには非常に困難な時期です。以下のような場合は、専門家のサポートを検討してください。
カウンセリングでできること
心理カウンセリングでは以下のようなサポートを行います。
また、不倫をした側の方には、パートナーの心理状態について正しく理解していただくための心理教育も行います。
カウンセリングの目標は、完全に忘れることや、すぐに信頼を回復することではありません。傷の回復や関係の構築のプロセスを進めるサポート、心の整理と決断のサポートです。
まとめ
パートナーに不倫された方がパートナーの行動を把握したいと思うことは、決して恥ずかしいことではありません。それは「もう傷つきたくない」「安心したい」という、とても人間らしい気持ちの表れです。
不倫された側の方へ
今は混乱していて当然です。自分を責めることなく、自分の気持ちを大切にしてください。
不倫をした側の方へ
パートナーの反応は、あなたの行動の当然の結果です。この状態が一定期間続くことを受け入れ、継続的なケアに努めてください。
大切なのは、自分を責めることではなく、より効果的で持続可能な安心感を得る方法を見つけることです。それは一人ひとり違っていることがしばしばです。時間がかかる場合もあります。
一歩ずつ、あなたなりのペースで取り組んで下さい。そして、どのような選択をするにしても、それはあなたの人生であり、あなたに決める権利があります。
時間をかけて、支えを借りながら、自分にとって最善の道を見つけていってください。
参考ページ:不倫・浮気のカウンセリング