心に思い浮かんだことを次から次へと話し続けると、相手は何を伝えたいのか理解するのがむずかしくなります。聴いてもらうには、伝えたいことを整理して、明確にする必要があります。
今回は、アサーティブコミュニケーション(自分も相手も尊重するコミュニケーション)を実践するための具体的な方法、DESC法を紹介します。DESC法は、事実を述べ、気持ちを表現し、提案し、結果を示すという4つのステップで、相手に伝わりやすい話し方を実現します。
前回の振り返り
前回は、自分の気持ちや考えを言語化するための「自分自身との対話」について説明しました。ABC理論を使って出来事・考え・感情を整理する方法、思考の7つの偏り、怒りの背後にある第一次感情の見つけ方を紹介しました。言語化することで、アイメッセージを効果的に使えるようになります。
なぜ整理して伝える必要があるのか
思いつくまま話すと伝わらない
心に思い浮かんだことを次々に話すのは、本人自身が伝えたいこと、伝えるべきことを整理できていない、明確になっていない場合が多いようです。
本人は話すことでスッキリしているかもしれません。しかし、相手にとっては、話が長くなればなるほど、何を伝えたいのか、何を共有したいのか、理解するのがむずかしくなるものです。
ショックな出来事があったなど混乱しているときは、整理できないのもやむを得ません。聴いてもらうことで整理が進むものです。話しながら整理を進めるのは、カウンセリグの機能や目的の一つでもあります。
しかし、日常会話で繰り返されると、相手はうんざりしてしまうかもしれません。適当に聞き流すようになるかもしれません。苛立ちを表しながら、「勘弁して」と断られるかもしれません。
整理することで理解される
聴いてもらうには、ある程度整理して、伝えたいことを明確にする必要があります。整理することには、以下のメリットがあります。
整理して伝える方法として、DESC法を紹介します。
DESC法とは

4つのステップ
DESC法は、アサーティブコミュニケーション(自分も相手も尊重するコミュニケーション)を実践するための具体的な方法です。以下の4つのステップから構成されています。
それぞれのステップについて説明します。
D:Describe(記述する・描写する)
このステップでは、対象の行動や状況を具体的かつ客観的に記述します。感情や評価を交えずに、事実のみを述べることが重要です。以下の要領です。
昨日のミーティングで、あなたは私の提案に対して何もコメントしなかった。
「いつも無視する」「全然聞いてくれない」のような一般化した表現ではなく、具体的な出来事を、いつ・どこで・何が起きたかを明確に述べます。
E:Express(気持ちを表現する)
自分の感情や考えを正直に表現します。ここで、アイメッセージです!このためにアイメッセージの記事を書いたと言っても過言ではありません。4つのステップを説明していますが、まずはここまで出来れば上々です。
私はあなたが私の提案に反応しなかったことに、不安を感じています。
上記のように、自分の内面を素直に伝えます。自己の感情に責任を持ち、相手を非難する言葉は避けることが肝心です。自己の感情に責任を持つとは、自分が何を感じているのかを正確に認識し、それを適切に表現することです。
「私は怒っています」ではなく、「この状況は私を不安にさせます」と表現することです。怒りという第二次感情ではなく、不安などの第一次感情を表現します。
第一次感情:直接的な、即座の感情反応で、特定の出来事や状況に対して自然に生じる感情です。例えば、愛や喜び、驚き、恐怖などがこれに当たります。
第二次感情:第一次感情に対する反応として生じる感情です。第二次感情は、第一次感情に基づいているが、より複雑で、しばしば社会的な状況や個人的な解釈によって形成されます。例えば、恥や罪悪感、怒りなどがこれに含まれます。
S:Specify(具体的に提案・要求する)
望む変化や具体的な行動を明確に示します。
今後のミーティングでは、私の提案に対するあなたの意見を聞かせてほしい
このステップでは、具体的で達成可能な目標を設定することが大切です。あいまいな提案(認識の違いが起こりやすい)や大きな要求(達成困難で互いに失望する)は避けます。
C:Consequences(結果)・Choose(選択する)
提案した変化がもたらす肯定的な結果や、変化がなかった場合の負の影響を説明します。
そうすれば、私たちはより効果的にプロジェクトに取り組むことができ、チームとしての成果も向上するでしょう
自分も尊重するコミュニケーションですから、相手には提案・要求にNoを言う権利があります。Noが返って来た場合には、Sに戻って新たな提案・要求を行うことになります。
DESC法の具体例

週末の朝の夫婦の会話
週末の朝、キッチンでコーヒーを飲んでいる夫婦の会話という設定で、DESC法の例を示します。
妻(Describe – 記述) 「太郎さん、少し話があるの。最近気付いたんだけど、家事をする時、大体いつも私一人でやっていることが多いのよ。たとえば、昨日の夜も、私が洗濯と掃除をしている間、あなたはソファでリラックスしていたわね」
夫 「うん、そうだね。でも、どうかしたの?」
妻(Express – 表現) 「正直言うと、その状況を見ると、私はとても疲れているのにあなたは手伝ってくれないと感じて、悲しくなるの。私一人で家事をするのは大変だし、時には支えられていないように感じるわ」
夫 「そんな風に思っていたなんて知らなかったよ。ごめんね」
妻(Specify – 具体化) 「ありがとう。私の提案としては、これからは夕食の準備をする時、あなたも何か一つ手伝ってくれたらいいと思うの。たとえば、野菜を切るとか、テーブルのセットをするとか」
夫 「なるほど、そういうことか。それならできるよ」
妻(Consequences – 結果) 「それを聞いて安心したわ。そうすれば、私も少しは楽になれるし、私たち二人で協力して家を整えることで、もっと家庭が温かい雰囲気になると思うの。それに、二人でやれば料理ももっと楽しくなるわよ」
夫 「確かに、そうだね。これからは手伝うようにするよ。一緒にやれば、もっといい時間が過ごせそうだね」
DESC法のポイント
上記の例から、DESC法のポイントを整理します.
DESC法を使う際の注意点
タイミングを選ぶ
DESC法は効果的な方法ですが、どんなときでも使えるわけではありません。
お互いが落ち着いているとき、時間に余裕があるときに使うのが望ましいです。怒りが強いとき、疲れているとき、急いでいるときは避けましょう。
練習が必要
最初はぎこちなく感じるかもしれません。紙に書いて練習してから話すのも一つの方法です。
慣れてくると、自然に使えるようになります。重要な話し合いほど、事前に準備することが効果的です。
完璧を目指さない
4つのステップを完璧にこなす必要はありません。まずはDとE、つまり「事実を述べて、気持ちを伝える」ことから始めるだけでも、コミュニケーションは改善されます。
まとめ





