アイメッセージで気持ちを伝えるには、まず自分の感情や考えを言葉にする必要があります。当たり前のことはありますが、これを苦手にしている人は少なくありません。
言語化が苦手な人は、ストレスをためて怒りで表現しやすい傾向があります。今回は、自分の気持ちや考えを言語化するための「自分自身との対話」について説明します。
前回の振り返り
前回は、アサーティブ・コミュニケーション(自分も相手も尊重するコミュニケーション)と、その第一歩目として、アイメッセージ(私を主語にして気持ち・考えを伝える言い回し)を紹介しました。「あなたは」を主語にすると相手を責める表現になりやすく、「私は」を主語にすると相手が受け止めやすい表現をしやすくなります。
気持ちと考えを言語化する必要性
アイメッセージの復習
前回の復習です。
整理整頓が苦手なパートナー。繰り返されてイラッとしたあなたが言いました。
「あなたは本当に片づけられない人ね」「お母さんに似てるね」
相手の人格を否定する言葉は人間関係を悪化させます。特に「お母さんに似てるね」のような家族を否定する言葉は、本来言ってはいけない言葉です。ここでは、わかりやすい例としてあえて用いていることをご了承下さい。
傷ついたパートナーが発する言葉には、以下の2つのパターンがあります。
1:何で、そんな言い方するの
2:その言い方は傷つく
パートナーから上記のように言われたとき、「1」と「2」のどちらが受け取りやすいと感じるでしょうか。
おそらく「2」でしょう。
2つの違いを説明します。
1:(あなたは)何で、そんな言い方するの
1は、ユーメッセージ(You message)です。「あなた」が主語の表現です。
相手の行動を批判する形になりやすいため、相手の反発を招きやすいです。
2:(私は)その言い方は傷つく
2は、アイメッセージ(I message)です。「私」を主語にして、自分の気持ちや考えを表現しています。相手が受け止めやすい表現です。
アイメッセージを使用することで、自分の感情やニーズを明確に伝えつつ、相手に攻撃的にならずに済むため、夫婦間での理解と協力が促進されます。
そのためには、自分の気持ちや考えを言語化する必要があります。得意な人と苦手な人がいます。
なぜ言語化が必要なのか
自分の気持ちや考えを言語化しないまま、または言語化できないまま、相手に何かを伝えようとすると、「あなた + 行動・発言の批判」という形になりがちです。
例えば、「どうして、いつもそうなの!」「また、やってない!」という言い方です。
これでは、自分が本当に何を感じているのか、何を望んでいるのかが相手に伝わりません。相手は責められたと感じ、防衛的になります。
言語化することで、「私は〜と感じている」「私は〜してほしい」と明確に伝えられるようになります。
ABCで考える:感情と考えを整理する

ABC理論とは
言語化をサポートするツールとして、論理療法のABC理論を紹介します。

同じ出来事(A)が起きても、人によって生じる感情(C)は異なります。その違いは、人によって受け取り方・考え(B)が異なるからです。それを示しているのが上図です。
上図からわかるように、感情(気持ち)は単語で表現されることが多いです。考え(受け取り方)は文で表現されることが多いです。
出来事(A)が入口になります。感情(C)の言語化は比較的簡単です。むずかしいのは、考え(B)の言語化です。
「そのとき、どのようなことが頭に浮かんだのだろう?」「その後、どうなるのを避けたかったのだろう」など、自分に質問を投げかけて言葉にしていくのがオーソドックスなやり方です。
具体例
いくつか例をあげておきます。
紙に書いて整理する
多少の面倒くささはありますが、少なくともコツをつかむまでは、紙に書いて考えるのが望ましいです。紙に書くことで、気持ちや考えから距離を取ることができます。客観的な視点を持ちやすくなったり、冷静さを取り戻しやすくなります。
考えの偏り:思考のクセに気づく
7つの代表的な偏り
人には考え方のクセがあります。不快な感情が生じたとき、そのように感じるのはもっともだ、という場合があれば、偏った受け取り方をしている場合もあります。考え方・受け取り方の偏りの代表7つを紹介します。
以下、説明・事例・気づいたときの対処法の順で記しています。
(1)一般化のしすぎ
1つの失敗やイヤな出来事があると、「いつも〜だ」「すべて〜だ」のように一事が万事と考えます。一滴のインクが全体を黒くしてしまうかのようです。レッテルを貼るのは一般化の極端な例です。
(2)個人化(自己関連づけ・自己批判)
何か良くないことが起こったとき、自分に関係のないことまで自分の責任にしてしまいます。
(3)根拠がない推論(早とちり・視野狭窄・マインドリーディング)
明確な証拠があるわけではないのに悲観的な結論を出してしまいます。過去の似たような経験が、現状を客観的に見えにくくしています。
(4)全か無か思考(白黒思考)
ものごとを白か黒かのどちらかで考えます。グレーゾーンを認めない考えです。
(5)べき思考
「〜すべき」「〜しなければならない」と考えます。そうしないと罰でも受けるかのように感じ、罪の意識を持ちやすい。他人に向けると怒りや葛藤を感じます。
(6)過大評価と過小評価
自分の欠点や失敗を過大に考え、長所や成功を過小評価します。逆に他人の成功を過大に評価し、他人の欠点を見逃します。
(7)感情的決めつけ
客観的事実ではなく、自分がどのように感じているかを手がかりに状況を判断します。根拠がない推論の一部です。
偏りに気づくには
思考の偏りに気づくには、思考を紙に書いて、距離置いて眺めるのが役に立ちます。誰かに話を聴いてもらって、フィードバックを得るのも有効です。相手に気持ちを伝えるのと同時に、偏りのセルフチェックを行うとより望ましいです。
ただし、自力で偏りに気づいて修正するのは難易度が高いです。そのためにカウンセリングが存在します。Webや書籍の情報だけでは取り組むのが困難なときは、カウンセリングをご検討下さい。
怒りの対処:第一次感情に焦点を当てる
怒りは第二次感情
感情の中でも、怒りは扱うのがむずかしく、事態を悪化させることが多いものです。実際、怒りをコントロールできずに関係を悪化させる例は少なくありません。
怒りは脅威を感じたときに生じる感情です。不当な扱いを受けたと感じたとき。闘争逃走反応のように緊急事態に陥ったと感じたとき。境界を超えて自分のスペースが侵害されたと感じたとき。不公平や不正、不正義に対する反応として生じることがあります。
感情を「第一次感情」と「第二次感情」に分類して捉える考え方があります。この考え方は、怒りをはじめとする感情とつき合うのに役立ちます。
第一次感情:直接的な、即座の感情反応で、特定の出来事や状況に対して自然に生じる感情です。例えば、愛や喜び、驚き、恐怖などがこれに当たります。
第二次感情:第一次感情に対する反応として生じる感情です。第二次感情は、第一次感情に基づいているが、より複雑で、しばしば社会的な状況や個人的な解釈によって形成されます。例えば、恥や罪悪感、怒りなどがこれに含まれます。
第一次感情を言語化する
イライラしやすい人は、イライラを生む第一次感情に焦点を当てて、言語化することを望まれます。相手にアイメッセージで伝えるべき感情は第一感情です。以下に例をあげます。
平たく表現すると、「こんなにがっかりさせて!」「こんなにさびしい想いをさせて!」と怒ってしまうわけです。アイメッセージを使っていても、伝える感情は常に怒りの場合、まだ言語化が足りていないと思って下さい。
まとめ





