【アイメッセージ】親密さと関係を育てるコミュニケーション(2)

執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士

「自分の気持ちを伝えたいけど、相手を傷つけたくない」というジレンマに、私たちはしばしば直面します。このような状況で役立つのが、自分も相手も大切にする自己表現、アサーティブコミュニケーションです。

夫婦間でこのスキルを身につけることは、誤解を減らし、互いの理解を深めるために非常に効果的です。その第一歩が、「私」を主語にして気持ちや考えを伝えるアイメッセージです。

前回の振り返り

前回は、夫婦における「仲の良さ」と「関係の良さ」について説明しました。仲の良さは親密さを、関係の良さは敬意と協力を意味します。健全な夫婦関係を築くには双方が求められます。

双方を育てるには、お互いの結婚観や家族観を理解し、公平性を保ち、効果的にコミュニケーションを取ることが重要です。

アサーティブコミュニケーションとは

自分も相手も尊重する自己表現

関係を育てるには、好きなことを一緒に楽しむだけでは足りません。夫婦・家庭の将来像など、重要なことで一致を重ねていく必要があります。価値観の違いがありながらも、お互いが納得できる着地を積み重ねることが、二人の関係を発展させます。

そのために必要なのが、自分も相手も大切にして、自分の考えをしっかり伝えることです。

アサーティブコミュニケーションとは、自分も相手も尊重する自己表現のことです。自分の意見をはっきりと述べつつ、相手の立場や感情も考慮に入れます。

例えば、子どもの教育方針で夫婦の考えが食い違ったとき、どのような言葉を相手にかけるでしょうか。

A:どうして、わかってくれないの!?

B:君の考えはわかった。けど、僕は〜と思う。なぜなら…

あなたがAのように言われると、どのように感じるでしょうか。非難されているように感じるかもしれません。あなたの考えが尊重されているようには聞こえないと思います。

Bはどうでしょう。「君の考えはわかった」から、理解されたことは伝わってきます。「けど、」以下の言葉から、異なる考えを持っているけれど、あなたを非難しているようには感じないでしょう。

Bの伝え方が好ましいのは感覚的にも理解できると思います。

なぜアサーティブコミュニケーションが必要か

夫婦には、仲の良さ(親密さ)だけでなく、関係の良さ(相互の尊重と協力)も必要です。家庭を運営するには、チームとして協力する関係が求められます。

価値観の違いがあっても、お互いが納得できる着地を積み重ねていくことが、関係を発展させます。そのためには、自分の意見を伝えつつ、相手の意見も尊重する姿勢が不可欠です。

コミュニケーションの3つの型

コミュニケーションには以下の3つの型があります。

攻撃的なコミュニケーション

口論する夫婦

攻撃的なコミュニケーションは、自分の意見を強く主張し、相手の感情や意見を無視するスタイルです。「I’m OK. You are not OK.」と表されます。この方法では、しばしば相手を非難し、自分の意見を強制します。

特徴と例

  • 相手を責める言い方
  • 「あなたは間違っている」という姿勢
  • (例)「いつもやることが遅い!」「あなたのせいだ」

影響

相手は防衛的になり、反発します。短期的には自分の主張を通せても、長期的には信頼関係が損なわれます。

背景

過去の経験から、自分を守るために攻撃的になる場合があります。また、自分の意見が尊重されないと感じているときに、強く主張することで認められようとします。

夫婦関係では、相手に敬意を示し、相手の意見や感情を尊重することが重要です。攻撃的なコミュニケーションは、この基本的な尊重を欠いているため、通常は避けるべきです。

受動的なコミュニケーション

受動的なコミュニケーションは、自分の感情や意見を抑え、相手に合わせる傾向があります。「I’m not OK. You are OK.」と表されます。こうしたスタイルでは、自分のニーズや意見が後回しにされ、満たされない感情が残りやすいです。

特徴と例

  • 自分の意見を言わない
  • 「いいよ」と言いながら不満を溜める
  • (例)「いいよ」(本当は不満を感じている)

影響

表面的には穏やかに見えますが、不満が蓄積し、いずれ爆発したり、関係が冷え込んだりします。自己肯定感も低下します。

背景

対立を避けたい、嫌われたくないという気持ちから、自分を抑える傾向があります。防衛機制として、自分の本当の気持ちを認識しないようにすることもあります。

※ 防衛機制とは、人々が心理的ストレスや不快な感情を無意識に処理し、自分を保護するための心理的な戦略です。不安やストレスを感じるときに、それらの感情を抑えたり、現実から目を背けたりする方法です。抑圧、否定、合理化、投影、退行、昇華などがあります。

受動的コミュニケーションは、表面的な調和を保つかもしれませんが、真の理解や満足にはつながらないため、通常は避けるのが望ましいです。

アサーティブコミュニケーション

冷静に会話するカップル

攻撃的もしくは受動的なコミュニケーションは、誤解や不満を招きやすいため、アサーティブ(自分も相手も大切にする)なコミュニケーションが望ましいです。

特徴

  • 自分の意見をはっきり述べる
  • 相手の意見も尊重する
  • 「私はこう思うけど、あなたはどう思う?」という姿勢
(例)攻撃的 ➡ アサーティブ
  • 攻撃的:「いつもやることが遅い!」
  • アサーティブ:「時間通りに物事を進めることが大切だと思う。スケジュールについて話し合いたい」
(例)受動的 ➡ アサーティブ
  • 受動的:「いいよ」(本当は不満を感じている)
  • アサーティブ:「君の提案を理解するよ。でも、私の考えも話したい。こんな提案はどうだろう?」

影響

お互いの意見が尊重され、建設的な話し合いができます。信頼関係が深まり、納得できる解決策を見つけやすくなります。

背景

自分の意見をはっきりと述べつつ、相手の立場や感情も考慮に入れることが重要です。伝え方の一つに、「私はこう思うけど、あなたはどう思う?」という言い方があります。自分の意見を尊重しつつ、相手にも話を聞く余地を残します。

アサーティブにコミュニケーションを取ることで、互いのニーズや期待を明確にしつつ、相手を尊重するバランスを保つことができます。これにより、健全な関係を築き、互いの理解を深めることが可能になります。

常にアサーティブでなければならないわけではない

いかなるときでもアサーティブコミュニケーションであるべきかと問われると、必ずしもそうではありません。

理不尽な要求にはNoを返す権利があります。相手が強硬に理不尽な要求を押しつけてくる場合は、強く拒否の姿勢を示す必要があるかもしれません。「あなたの要求は受け入れられません」と宣言するのは、自分を尊重することです。広義のアサーティブコミュニケーションと言えます。

強烈な怒りをぶつけられて、怖くて話せないこともあるでしょう。何を言っても火に油を注ぐ結果になることもありえます。そのようなときは、自分を守るために受動的であるのが望ましいこともあります。その選択も広義のアサーティブコミュニケーションと言えます。

アイメッセージ:「私」を主語にして伝える

ユーメッセージとアイメッセージの違い

アサーティブコミュニケーションの第一歩目はアイメッセージです。アイメッセージとは、私を主語に考えや気持ちを伝える言い回しです。

以下の2つのメッセージは同じことを訴えています。

1:何でいつも散らかしっぱなしやの?

2:片付いてると落ち着けるねん。一緒に片づけて。

同じことを訴えているのですが、自分が言われる立場になったとき、どちらのほうが受け入れやすいでしょうか。おそらく2でしょう。

違いは主語です。

1:(あなたは)何でいつも散らかしっぱなしやの?

2:(は)片付いてると落ち着けるねん。一緒に片づけて。

ユーメッセージ(You message)とは、「あなたは」という表現を用いる方法です。 アイメッセージ(I message)とは、自分の気持ちや考えを表現する際に「は」という表現を使う方法です。

ユーメッセージ相手の行動を批判する表現になりやすいです。相手の反発を招きやすい言い回しになります。

上記の例文1は疑問形になっていますが、相手の答えを求めるより、相手を批判する目的で使われることがしばしばです。相手が「○○○だから…」と答えると、「片づけた後でいいでしょ!」とか「言い訳はやめて!」と返すのが、ありがちなパターンです。

アイメッセージ自分の気持ちの表現にとどまります。相手は責められたと感じにくく、相手が受け止めやすい言い回しです。

  • ユーメッセージ:あなた + 行動・発言
  • アイメッセージ:私 + 気持ち・考え

アイメッセージを使用することで、自分の感情やニーズを明確に伝えつつ、相手に攻撃的にならずに済むため、夫婦間での理解と協力が促進されます。

自分の気持ち・考えを言語化する

アイメッセージで伝えるためには、自分の気持ちや考えを言葉にする必要があります。

ユーメッセージが習慣になっている人は、自分の気持ちや考えを言語化しない傾向があります。気持ちや考えの言語化が苦手な人もいます。

言語化しない人・苦手な人は、ストレスをためて、怒りで表現しやすい傾向があります。ストレスをためると、人は「あなた + 行動・発言の批判」の形で表現します。相手の反発を招きやすい言い回しです。

アイメッセージを用いるためには、自分の気持ちや考えを言語化する必要があります。

次回は、自分の気持ち・考えを言語化する「自分自身との対話」です。

まとめ

  • アサーティブコミュニケーションとは、自分も相手も尊重する自己表現のこと。自分の意見をはっきりと述べつつ、相手の立場や感情も考慮します。
  • コミュニケーションには3つの型があります。相手も自分も尊重するアサーティブ、相手の気持ちを無視する攻撃的、自分の欲求を抑える受動的です。
  • 攻撃的なコミュニケーションでは、「あなた + 行動・発言の批判」の形で行われます。この形は気持ちが伝わらないだけではなく、相手の反発を招きやすい表現です。
  • アサーティブコミュニケーションの第一歩目は、自分の気持ちを「私は」で表現するアイメッセージです。ユーメッセージ(あなたは)ではなく、アイメッセージ(私は)を使うことで、相手は受け入れやすくなります。
  • アイメッセージを使うには、自分の気持ちや考えを言語化する必要があります。言語化が苦手な人は、ストレスをためて怒りで表現しやすい傾向があります。
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