【不適切な伝え方】親密さと関係を育てるコミュニケーション(5)

執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士

コミュニケーションの障害になり得る言葉には典型的な例があります。「いつも」「また」といった曖昧な言葉、怒りを伴う質問の形は、誤解や対立を引き起こす原因となります。また、身振りや手振り、口調などの非言語情報もコミュニケーションの重要な要素です。

「いつも」「また」は特定の行動や状況を一般化する

「例えば、「あなたはいつも遅刻する」という言い方は、常にそうであるかのように誇張してしまいます。また、行動を批判しているつもりが、人格の批判になりうる表現です。相手に不公平感を与え、防衛的な態度や反発を引き出すことがあります。

さらに行き過ぎた表現として、「あなたは自分勝手なんだから」「あなたはズルい人」のようなレッテル貼りがあります。これは行動の批判を超えています。

怒りを伴う質問の形

例えば、「どうしていつもこんなに無神経なの?」という言い方は、質問の形を取っていますが、実際には相手を非難しています。

相手はその質問に対して真剣に答えようとすることがあります。しかし、怒りを込めた質問はしばしば、相手の回答を「言い訳」として切り捨てます。

「何を言っても言い訳と切り捨てられるなら、黙っている方がマシ」となり、ますますコミュニケーションが悪化していくこともあります。

アイメッセージで

対処法は、これまでの投稿で紹介したアイメッセージです。DESC法です。事実や状況を具体的に示して、それをどのように感じたのかを「私を主語」にして表現し、相手に望むことを伝えます。

普段、そのような意識をしていない人にとっては、とても面倒に感じるかもしれません。しかし、ただ仲良くするのではなく、お互いを尊重して協調関係を築くには努力が必要です。何となく会話しているだけで関係が築けることはありません。

非言語コミュニケーションの影響

「目は口ほどにものを言う」と言いますが、どの程度ものを言うのかを研究した人がいます。心理学者アルバート・メラビアンが提唱したメラビアンの法則です。

私たちは言葉だけでコミュニケーションを取っているわけではありません。言語情報に加えて、視覚情報(身振りや手振り)、聴覚情報(声のトーンや口調)を用いています。

  • 「悲しい」(言語情報)と
  • 伏し目がち(視覚情報)に
  • 弱々しい声(言語情報)で

つぶやくとき、すなわち3つの情報が一致しているとき、悲しい気持ちが正確に伝わります。

  • 「悲しい」(言語情報)と
  • 睨むように(視覚情報)に
  • 強い口調(言語情報)で

ぶつけられたとき、すなわち3つの情報が不一致のとき、この場合なら、相手は怒っていると受け取るでしょう。「悲しい」とは受け取らないはずです。

(この場合、「悲しい」という第一次感情から「怒り」という第二次感情が生じたと考えられます。詳しくは【自分自身との対話】親密さと関係を育てるコミュニケーション(3)をご覧下さい)

メラビアンの法則は、3つの情報が不一致のとき、どの情報が優先されるかを示すものです。優先度は以下の通りです。

  • 言語情報(7%)
  • 聴覚情報(38%)
  • 視覚情報(55%)

3つの情報が不一致のとき、言語情報は受け取ってもらえない可能性が高いです。

特に怒りに包まれているときほど、そうなりがちです。「いつも」と一般化して、「〜な人」とレッテルを貼って、「どうして〜?」と質問の形で、3つの情報が矛盾しているものです。

後の投稿で、提案する予定にしていますが、コントロールがむずかしいほど怒りの強度が高いときは、話し合いを避けるのが望ましいです。まずは沸騰した感情を冷ますことに注力して、話し合いはそれからが理想です。

まとめ

  • 相手の行動を批判するとき、「いつも」「また」をつけると人格否定になりかねない。
  • 質問の形で怒りを表現すると、堂々巡りに陥りやすい。
  • 言語、聴覚、視覚情報の3つが矛盾するとき、言葉は伝わらないことが多い。
  • 感情を落ち着けて、アイメッセージで伝えるのが基本。
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