パートナーの不倫・浮気によって傷つけられた多くの方が、フラッシュバックをはじめとするトラウマ症状に悩まされます。
フラッシュバックとは、裏切りの場面やその感情が突然思い出され、あたかも今この瞬間、その出来事が起きているかのように体験する現象です。
フラッシュバックの詳細や対処法については、以下のページをご覧下さい。このコラムでは、トラウマ記憶と通常の記憶との違いなど、そのメカニズムについて解説します。
参考ページ:不倫・浮気のフラッシュバックに対処する
トラウマ記憶と通常の記憶の違い
冒頭の画像は、トラウマ記憶と通常の記憶の違いを視覚的に表現しようと試みたものです。
通常の記憶は、出来事、感情、感覚が整理され、一つの「過去の物語」として脳に保存されています。何度も思い出し、振り返る中で、感情は少しずつ色あせ、私たちに与える影響も小さくなります。
トラウマ体験は衝撃が大きすぎて、その体験を脳が適切に処理できず、出来事、感情、感覚がバラバラの状態で保存されます。なるべく思い出さないように冷凍保存されます。そのため、新鮮さを保っています。通常の記憶のように色あせることがありません。
バラバラの状態で冷凍保存された記憶が何かのきっかけで瞬間解凍されて、あたかも「今この瞬間起きている」ように体験するのがフラッシュバックです。

なぜ、そのような違いが生じるのでしょうか。
通常の記憶は今に悪影響を及ぼさない

通常の記憶は、何度も思い出したり、友人と分かち合うなどして、自らその記憶に触れる機会を重ねています。語り(物語る)を繰り返すことにより、出来事、感情、感覚のつながりがより確かなものになり、より整理されます。
そうして、良い思い出も、悪い思い出も、感情と感覚は徐々に色あせていき、セピア色の過去になります。思い出して苦い思いをすることがあっても、あくまで過去のことであり、今に悪影響を及ぼすことはありません。
トラウマ記憶は生々しさを保ったまま冷凍保存されている

トラウマ体験は衝撃が大きすぎて、脳の処理能力を超えてしまい、バラバラのまま保存されます。断片化した記憶と表現されます。
時間の経過とともに薄れたり変化したりしにくい、強固で生々しい記憶として保存される様子を冷凍保存と表現することがあります。
残念ながら、冷凍保存されたままにはなってくれません。何らかのきっかけで瞬間解凍されて、フラッシュバックなどを体験させられてしまいます。
「記憶をなくす薬がほしい」「手術して記憶をなくすことができるならすぐに受けたい」とおっしゃる方もいるくらい苦しい体験です。
断片化したトラウマ記憶の整理・統合を促す取り組みがトラウマの対処となります。
被災などによるトラウマ症状は多くの場合、適切なケアや時間の経過とともに症状が軽減していきます。1ヶ月くらいで自然に軽快することが多いとされています。
しかし、不倫によるトラウマ症状が1ヶ月程度で収まる例は、少なくとも当カウンセリングルームでは、ほとんど経験しません。その原因もある程度明確になっています。詳しくは以下のページをご覧下さい。
参考ページ:不倫・浮気のフラッシュバックに対処する
回復力を奪うトラウマ体験
私たちの心には、多少のストレス状況などの逆境を跳ね返す力があります。この力をレジリエンスと言います。
ボールに力を加えて凹ませても、離せば元に戻ります。バネを押さえつけて縮ませても、離せば元に戻ります。レジリエンスとは、このような力とイメージしていただければ良いと思います。
ショック体験の大きさに関わらず、レジリエンスが十分に発揮されれば、トラウマになりません。
限度を超える衝撃を加えられて、凹んだ状態から、縮んだ状態から、元に戻れなくなった状態がトラウマ体験です。パートナーの不倫がトラウマになるのは、レジリエンスが発揮できないほどの衝撃だからです。
トラウマの症状を含む、不倫による心の傷全般の説明は以下のページをご覧下さい。
参考ページ:不倫・浮気による心の傷を癒す
回復は可能
このコラムでは、「トラウマ記憶のメカニズム」について説明しました。
パートナーの不倫・浮気による傷の回復には時間がかかることが大半です。しかし、適切なステップを踏むことで、傷ついた心を少しずつ回復させることが可能です。一人で抱え込む必要はありません。必要に応じて、専門的なサポートを受けることを検討してみてください。