
執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士
パートナーの不倫・浮気は、人生や夫婦関係の意味を大きく揺るがす出来事です。
裏切られた深い傷に苦しんでいる方、やり直すか別れるかの間で葛藤している方、再構築を決めたものの前に進むことがつらいと感じている方――そのような方々を、丁寧にサポートしています。
カウンセリングでは、再構築を押しつけることはありません。再構築を選んだ方にも、別れを選んだ方にも、それぞれの最良の決断ができるよう寄り添いながら支援します。
対面とオンライン、どちらでもご相談いただけます。
不倫・浮気に統一された定義はありませんが、以下のように捉えるのが一般的です。
不倫
結婚している人が配偶者以外と恋愛や性的関係を持つこと。倫理的、社会的、法的な側面で問題視されやすい。
浮気
主に恋人やパートナー間での信頼関係を裏切る行為。恋愛感情や親密さを伴うが、必ずしも性的関係があるとは限らない。
風俗は不倫ではないと考える人がいます。しかし、法律に定められている不貞とは、配偶者以外との肉体関係とされています(民法770条1項1号)。風俗も不倫と考えるのが妥当です。
SNSの普及により、不倫や浮気の形も変わってきました。オンライン上で親密なメッセージや性的な会話を頻繁にやりとりする関係は、不倫や浮気と同じように捉えられることがあります。
以上が一般的な定義ですが、何をもって不倫・浮気とするかは個人の価値観に大きく左右されます。お互いがパートナーの価値観を理解し、相手に苦痛を与える行為を自制することが望ましいでしょう。一方で、パートナーに極端な価値観を押しつけないことも大切です。
関連ページ:不倫の種類と背景
不倫からの関係回復には2つのステージがあります。
基本的には、パートナーの傷の理解とケアが優先されます。なぜなら、不倫をした側が再構築のスタートラインに立っているとき、された側の心は骨折した状態で、スタートラインに立てないことがほとんどだからです。
傷つけられた側がスタートラインに立つまでは、傷の理解とケアが中心になります。2人がスタートラインに立ってからは、関係回復・再構築の取り組みを徐々に行っていくことになりますが、行ったり来たりしながら少しずつ進むのが自然な過程です。
このプロセスは簡単ではありませんが、多くのカップルが乗り越えています。2人で抱え込まずに、専門家のサポートを活用することも検討して下さい。
関連ページ:夫婦関係を再構築する
不倫や浮気が発覚したとき、傷つけられた側の心には深い傷が残ります。その傷は単なるショックではなく、人生や人間関係に大きな影響を及ぼすことがあります。ここでは、不倫されたパートナーが負う心の傷の深刻さと、その癒しのプロセスについて考えていきます。
パートナーの不倫や浮気が発覚したとき、傷つけられた側が受ける心の傷は、時にトラウマに匹敵するほど深刻です。この傷は単なるショックや悲しみではなく、自尊心や信頼感、人生の意味そのものを揺るがすほどの影響を与えることがあります。
トラウマとは、大きなショックやストレスが心に深く刻まれ、その後の生活に影響を及ぼす状態を指します。例えば、突然出来事が鮮明に蘇る「フラッシュバック」、眠れないほどの不安や緊張、他者や社会への信頼の喪失、自己肯定感の低下などが挙げられます。
特に、信頼していたパートナーからの裏切りは、「自分は誰を信じればいいのか」「自分に何が足りなかったのか」という強い自己疑念を生み出し、他者や社会との関わりにも影を落とします。その結果、日常生活全般に支障が出ることも少なくありません。
一方で、傷つけた側にとっては、傷の深さが想像以上であることが多く、理解が追いつかないことがあります。しかし、この傷の深さや影響を理解しようとする姿勢こそが、関係再構築への第一歩です。
心の傷がトラウマに匹敵するほど深刻であることを理解し、その痛みに共感することが、癒しへの大切な一歩となります。
関連ページ:不倫・浮気された心の傷を癒す
不倫や浮気が発覚した後、多くの人がフラッシュバックに悩まされます。フラッシュバックとは、過去の傷つき体験が、今この瞬間に再び起きているかのように感じられる現象です。
通常の記憶は、出来事・感覚・感情が整理されて「過去の物語」として保存されます。しかし、フラッシュバックを引き起こす記憶は、衝撃が大きすぎて脳が適切に処理できず、出来事・感覚・感情がバラバラのまま保存されていると考えられています。
そのバラバラの記憶が、特定の場所や言葉、音などをきっかけに突然解凍され、リアルに蘇るのがフラッシュバックです。この状態は心と身体に大きな負担をかけ、強い不安や警戒心、不眠、イライラ、集中力の低下など、日常生活にも深刻な影響を与えます。
一方で、フラッシュバックは「自分を守るための防衛反応」とも言えます。これ以上傷つかないために、心と身体が危険信号を発し続けているのです。「自分はおかしくなってしまったのではないか」と感じる必要はありません。
対処法としては、意識を「今ここ」に戻す方法が有効です。例えば、深呼吸、冷たいタオルを顔に当てる、目の前に見えるものを数える、身体感覚に集中するなどのテクニックがあります。
また、カウンセリングでは、バラバラの記憶を整理し、過去の物語として保存するサポートを行います。
関連ページ:不倫・浮気のフラッシュバックを乗り越える
不倫した側は、パートナーが深い傷を負っている姿を目の当たりにし、罪悪感や自己嫌悪に苛まれているかもしれません。一方で、「許されたい」「関係を回復したい」と願うものの、その道のりが果てしなく感じられ、無力感や絶望感に襲われることもあります。
また、日々続くパートナーからの怒りや涙、繰り返される質問に向き合いながら、自分の感情を押し殺し、逃げ出したくなる気持ちと葛藤することもあります。どれほど誠実に向き合っても信頼されず、心が折れそうになることもあります。
さらに、自分のつらさや疲れを口にすることが「被害者ぶっている」と受け取られるのではないかと恐れ、誰にも本音を打ち明けられない孤独感を抱えることもあります。
カウンセリングでは、不倫した側の心にも寄り添いながら、関係の回復・再構築をサポートします。傷ついた心の癒しと回復を進めるためには、ケアの主役である不倫した側の心身のコンディションも整える必要があるからです。
関係の回復・再構築は簡単ではありませんが、双方が真剣に向き合い、協力し合いながら進めば乗り越えられます。実際、カウンセリングにお越しになる夫婦の多くが再構築されています。
ここでは、再構築の4つのステップを紹介します。それぞれのステップに特有の課題がありますが、一つずつ丁寧に取り組むことで道が開けます。
この順番通りに進むわけではありません。行ったり来たりします。1つずつではなく、複数を同時に取り組むこともあります。
既に説明済みの内容ですが、再び触れることで重要性を強調しておきたいと思います。
傷つけられた側は、自分の価値や人生の意味を見失い、過去や未来への不安や絶望を感じることがあります。一方で、傷つけた側も、罪悪感や後悔、修復へのプレッシャーに苦しむことが少なくありません。
まず大切なのは、傷つけられた側の感情や苦しみを理解し、それを受け止めることです。フラッシュバックや不安に対する適切な対処法を学ぶことも必要です。また、傷つけた側は、その苦しみに真摯に向き合い、自らの行動の責任を受け止める姿勢が求められます。
傷の癒しには時間がかかります。一足飛びに「前を向く」ことはできません。カウンセリングでは、双方の心のケアをサポートし、安心できる環境で感情や考えを整理していきます。
関連ページ:配偶者の不倫相手に会いたいと思ったときに考えるべきこと
傷のケアと並行して、行動と考え方を変える取り組みが必要です。特に、傷つけた側には、以下の2つが求められます。
信頼回復のための行動
傷つけられた側は、「また裏切られるのではないか」という強い不安を抱えています。言葉だけでなく、行動で信頼回復の努力を示すことが重要です。例えば、透明性のある行動、約束の厳守、相手を安心させる日常的な配慮などです。
自己責任の理解
傷つけた側が「どうすればいい?」と傷つけられた側に指示を求めるのは、できる限り避けるべきです。自ら考え、行動する姿勢が信頼回復への第一歩です。
一方で、傷つけられた側も、自身の感情や不安と向き合い、少しずつ冷静さを取り戻す努力が求められます。
カウンセリングでは、具体的な行動改善の方法や、お互いの感情を受け止め合うコミュニケーションをサポートします。
不倫は、どんな理由があっても正当化されるものではありません。しかし、その背景には、夫婦関係や個人の心の問題が潜んでいることがあります。関係の再構築を目指すのであれば、これまでの関係を冷静に振り返り、以下のポイントに向き合う必要があります。
夫婦関係の悪化
日常のすれ違いや、コミュニケーション不足、相手への無関心など、夫婦関係に存在していた問題に目を向ける必要があります。
個人の問題
幼少期の傷や自己肯定感の低さ、ストレス耐性など、個人の課題が不倫の背景に隠れていることもあります。
再発を防ぐためには、これらの要因に向き合い、それぞれが自分自身を見つめ直すことが不可欠です。カウンセリングでは、二度と同じ問題を繰り返さないための具体的なアプローチを共に考えます。
関係の再構築には、建設的で誠実なコミュニケーションが不可欠です。しかし、多くの夫婦は以下のような課題に直面します。
良いコミュニケーションとは「お互いが理解し合い、納得できる着地点に到達するプロセスを歩めること」です。
コミュニケーションは関係を育てる土台です。再構築のカギは、コミュニケーションの改善・構築に頼る部分が大きいです。
当カウンセリングルームのカウンセラーが依拠する理論の一つは、「コミュニケーション派」と呼ばれる家族療法の学派です。コミュニケーションの支援を得意としています。
関連ページ:夫婦のコミュニケーションのカウンセリング