
執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士
HSPの人は、敏感さゆえに日常生活でのストレスや対人関係の問題を抱えることがあります。夫婦関係の中で顕著になることもあります。例えば、コミュニケーションの困難を引き起こすことがあります。HSPの繊細な感性を理解し、それを強みとして活かしながら、生きづらさをサポートし、夫婦関係をより豊かなものに変えるお手伝いをしたいと考えています。
『「繊細さん」の本』によって一気に広まったHSPの概念は、アメリカの心理学者、エレイン・N・アーロン博士によって、1990年代に提唱されました。
HSP(Highly Sensitive Person)は、外部の刺激や環境の変化に対して、特に敏感に反応する人々を指す概念です。子どものHSPをHSC(The Highly Sensitive Child)と呼びます。
これらの人々は、音、光、匂い、他人の感情などの刺激に対して強い感受性を持ちます。それが原因で過度なストレスや疲れを感じやすい傾向があります。病気や障害ではありません。個性や特性の一つです。
HSPの特性は大きく4つに分類されています。HSPの特性は状況によって、プラスとしてもマイナスとしても作用します。HSP自体は良いものでも悪いものでもありません。
HSPの人は、物事を深く考える傾向があります。一つ一つの出来事や情報に対して、多角的に考察する傾向が強いです。
プラスの例
複雑な問題やアイディアを深く考える能力があるため、独自の洞察や解決策を見つけることができる。
マイナスの例
過度に考えすぎることで、過度な心配や不安を感じることがある。
騒音や人混みなど、多くの刺激がある環境では疲れやすく、ストレスを感じやすいです。
プラスの例
環境の変化や新しい情報に迅速に反応できる。
マイナスの例
騒音や混雑などの過度な刺激によって疲れやすく、ストレスを感じやすい。
自分自身、または他人の感情に対して非常に敏感です。そのため、人々の気持ちを理解する能力が高く、共感する力も強いです。
プラスの例
他人の感情やニーズに敏感で、共感する能力が高いため、人間関係の深化やサポート役としての役割を果たすことができる。
マイナスの例
他人の感情に過度に影響されやすく、ネガティブな感情を強く受け取ることがある。
細かい違いや変化に気づきやすく、それが気になることが多いです。
プラスの例
細かいディテールや変化に気づきやすいため、芸術や研究などの分野での洞察力を持つ。
マイナスの例
他の人々が気づかないような微細な刺激や変化に反応し、それがストレスや不安の原因となることがある。
以下の23項目のうち12個以上当てはまると、HSPである可能性が高いとされています。
エレイン・N・アーロン 冨田香里訳 2008 ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。 SBクリエイティブ より引用
インターネットや書籍から、HSPの情報を豊富に得られます。それでも、カウンセリングが役に立つのは、以下の理由からです。
個別の対応
インターネットや書籍の情報は一般的なものであり、個々の状況や背景に合わせたアドバイスやサポートは限られています。カウンセリングでは、個人の具体的な悩みや背景に基づいたアプローチが可能です。
感情の処理
HSPの方は、他者よりも感情が強く影響を受けやすいため、その感情を適切に処理するスキルが必要です。カウンセリングでは、感情の処理方法を学ぶことができます。
安全な場
HSPによる生きづらさに対処するには、思考と行動の変容が求められるシーンがあります。ときに傷つくこともあります。傷ついた心を立て直す場所と機会があるからこそ、繰り返しチャレンジできます。カウンセリングは、そのような安全と安心の場となります。
自己理解の深化
カウンセリングを通じて、自分自身の感受性や反応のパターンを理解することができます。これにより、自分の特性を受け入れ、それを強みとして活かす方法を見つけることができます。
対人関係のサポート
HSPの方は、対人関係でのストレスや誤解を感じやすいことがあります。カウンセリングでは、これらの問題を解決するためのコミュニケーションスキルや対処法を学ぶことができます。
専門家のフィードバック
インターネットや書籍からは、直接的なフィードバックが得られません。しかし、カウンセリングでは、専門家からの具体的なアドバイスやフィードバックを受け取ることができます。
継続的なサポート
生きづらさを感じる場面は、日常の中で突如として現れることがあります。カウンセリングは継続的に受けることができ、長期的なサポートを受けることができます。
心理療法には多数の学派があります。当カウンセリングルームでは、ブリーフセラピー(短期療法、解決志向アプローチ)と認知行動療法にてサポートします。基本的な考え方を紹介します。
HSP(である自分)を変えるのではなく、HSPによる「生きづらさ」の解決を目指します。
HSPは個性でもあります。個性は常にマイナスに作用するわけではありません。プラスに作用する場面も大いにあります。今の自分のままで、マイナスに作用する場面における、対処力の向上を目指します。
上図「HSPのカウンセリング」に当てはめると、以下のように解決に向かいます。
①「具体的な悩み」の対処力が向上すれば
②「悩みの種類」全般への対処力が向上して
③「特徴」全般への対処力の向上につながります
当カウンセリングルームでは、「HSPの悩み」に取り組むとき、生活においてどのような障害(悩み・困りごと)が起きているかを具体的に伺っていきます。
具体的であるほど、具体的な解決像を描けます。具体的な支援策を考えやすくなります。進歩と成長を計測しやすくなります。効果を実感しやすくなります。小さな解決を積み重ねて、大きな解決に向かいます。
HSPの人が直面する課題は、夫婦関係の中で顕著になることがあります。HSP傾向を持つパートナーは、環境の変化や感情の波に強く影響を受けやすく、ときにはそれがコミュニケーションの困難を引き起こすことがあります。
当カウンセリングルームでは、このような繊細な感性を理解し、それを強みとして活かしながら、生きづらさをサポートし、夫婦関係をより豊かなものに変えるお手伝いをしたいと考えています。
夫婦カウンセリングを通じて、HSP傾向のあるご本人とパートナーの双方に、お互いの感情や思考を共有し、理解し合う場を提供します。これにより、お互いのニーズを尊重しながら、より良いコミュニケーションと理解を築いていくことができます。
逆説的ですが、人は人間関係で傷つき、人間関係で癒されます。HSPによる生きづらさを改善する土台になるのは、安心・安全な人間関係です。
心理学にアタッチメント(愛着)という理論があります。親など養育者と子どもの間に築かれる情緒的な絆のことです。不安なときに特定の人と「くっつく」ことで安心感を得ること、その欲求を意味します。
安定したアタッチメントは、子どもにとって安心・安全の基地になります。安心・安全の基地を拠点に子どもは外の世界を探索します。ときに傷つきます。傷つきも肯定的に受け止められることで自己肯定感が育ちます。傷ついても受け止めてくれる基地があるからこそ、再び探索に向かえます。チャレンジを繰り返すことで自己効力感(できる自信)が育ちます。
アタッチメントの対象は親に限りません。夫婦関係が安心・安全の基地になることで、HSPのパートナーは生きづらさを改善するチャレンジに向かいやすくなります。その積み重ねが自信を育て、生きづらさを和らげていきます。
当カウンセリングルームは、専門的な知識と経験を持つカウンセラーが、夫婦関係を安心・安全の基地となり、生きづらさが改善される支援を提供します。