
執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士
性格の不一致は、年代を問わず離婚理由の上位にあげられます。性格の不一致とは、価値観や行動様式、感情の表現方法の違い等によって生じます。当カウンセリングルームでは、性格の不一致を乗り越えて、夫婦関係を回復・改善するサポートを行っています。
性格の理論には様々なものがありますが、ここでは、個人の価値観や行動様式、感情の表現方法を意味するものとします。性格の不一致とは、例えば、一方が冒険的で常に新しい体験を求めるのに対し、もう一方は安定を重視し変化を避ける傾向があるといった場合です。
人には、それぞれ独自の成長環境や経験があります。それらは性格形成に大きな影響を与えています。結婚生活とは、異なる背景を持つ二人が密接な関係性の中で生活を共にすることです。それまでの個々の生活習慣や価値観が衝突することがあるのは当然のことでしょう。
また、人は時間と共に変化します。結婚当初とは異なる価値観や興味を持ち始めることがあり、その結果、夫婦間の性格の不一致が顕著になることもあります。このような変化は自然なものであり、夫婦関係の中でこれを認識し、適切に対処することが求められます。
夫婦間の性格の不一致は、お互いの違いを理解して、受け入れることよって乗り越えていきます。
受け入れるとは、相手の考えを無条件に受け入れることではありません。まずお互いの違いを深く理解し、それに対する相互の感じ方や考え方を尊重することです。その上で、双方が納得できる、健全な着地点を一緒に見出すことです。
相互理解と尊重を基盤とするプロセスを踏めるのであれば、性格の不一致は、夫婦関係の成長や発展の機会になり得るはずです。
性格の不一致の例をいくつか挙げてみます。
夫が具体的で事実ベースのコミュニケーションを好むのに対し、妻は感情や体験を共有することを重視する例です。
例えば、夫が仕事の話をするとき、具体的なデータや成果に焦点を当てますが、妻はその話の感情的な側面や影響について話したいと考えます。このため、夫は妻の話を「現実離れしている」と感じ、妻は夫の話を「乾燥していてつまらない」と感じることがあります。
この例は、ステレオタイプ的な男女の違いの記述です。確かにこの傾向は、特に中年期以降の夫婦によく見られます。しかし、男女が逆転している例もしばしば経験します。
一方は子どもに対して厳格な教育方針を持ち、学業やマナーに厳しい姿勢を取ります。他方は子どもの自由な発想や創造性を重視し、子どもに対して柔軟なアプローチを取りたいと考えています。この違いは、子どもの教育方法や日常のルールに関する議論を引き起こし、夫婦間の緊張につながることがあります。
唯一絶対の正解がないだけに、着地点を見出すのが困難なことがあります。どのように育ってほしいかによって教育方針が決まるかもしれません。それが明確になれば、子どもの性格や個性によって、選択する教育が絞られるかもしれません。
一方は貯蓄を重視し、将来のためにお金を使うことを控えめにしています。他方は人生を楽しむことを重視し、旅行や趣味に積極的に投資します。このため、家計に関する意見の不一致が頻繁に発生し、ストレスとなっています。
夫婦・家族の将来像について話し合うことが必要になるかもしれません。
整理整頓が得意で家をきれいに保ちたい側と、仕事・家事・育児が忙しく、家に多くの時間を割けない側との衝突です。この場合、家の中が散らかっていることが多く、前者がストレスを感じているケースが多いです。
あくまで一例ですが、時間のスパンを広げて考えることができるかもしれません。育児期間中であれば、期間限定で現状を受け入れるなどです。特に子どもが小さい間は、何かを捨てる・あきらめる必要が出てくるのはやむを得ない場合もあるでしょう。
不一致の解消はコミュニケーションから始まると言っても過言ではありません。お互いの違いを認めて、受け入れて、お互いが納得できる健全な着地点にたどり着くコミュニケーションです。
当カウンセリングルームのカウンセリング手法は、家族療法のコミュニケーション派と呼ばれる学派の理論に基づいています。コミュニケーションの支援を得意としています。
性格の不一致に対処する上で、カウンセリングは有効なサポートを提供できます。カウンセラーが2人の会話に参加して、相互理解が深まるコミュニケーションが起きるようお手伝いします。安全で中立的な環境の中で話し合うことができます。
カウンセリングでは、夫婦はお互いの考えをオープンにして共有します。カウンセラーは、この過程で発生する感情や対立を管理し、建設的な対話を導きます。このプロセスを通じて、夫婦は問題解決のための新たなアプローチを学び、関係を強化することができます。
夫婦カウンセリングで得られるのは、例えば効果的なコミュニケーションスキルです。また、お互いの感情の理解の深化、ストレスや不安の軽減があります。また、夫婦が直面する特定の問題に対して、お二人に特化された提案を行います。
カウンセリングの形態には、個別でのカウンセリングと夫婦でのカウンセリングがあります。夫婦でのカウンセリングが基本となりますが、中には、個別のカウンセリングを希望される場合もあります。カウンセラーから個別のカウンセリングを提案するケースもあります。
夫婦カウンセリングでは、夫婦関係において直面する課題を克服し、より充実した絆を築くためのサポートを提供します。
当カウンセリングルームでは、家族療法・ブリーフセラピーと認知行動療法を用いて夫婦・カップルの問題解決を支援しています。
ブリーフセラピー・家族療法では、問題の原因を個人内ではなく、コミュニケーション(相互作用)によって維持されていると考えます。相互作用の変化を促して問題の解消・解決を目指します。原因や犯人探しをしない、人にやさしいカウンセリングです。
認知行動療法は、認知(考え方、物事の捉え方)と行動のパターンを改善することで問題の解決を目指します。お互いの気持ちや考えを理解し合うことにおいて、とても役に立つ理論です。セルフケアなど様々な場面で活用されています。
私が子どもの頃、よく両親が喧嘩していました。子ども心ながらに「さっさと離婚すればいいのに」と思ったこともありました。今ではその記憶も色あせていますが、隣の部屋から聞こえてきた言い争いの感覚は残っています。
その両親も今や後期高齢者です。お互いを支え合いながら、何とか元気に夫婦をやっています。
私の結婚生活も両親と似ている時期がありました。両親以上だったかもしれません。関係悪化の要因の多くは私にありました。離婚されても仕方なかったと思います。あれこれありましたが、おそらく今が、結婚生活を通して最も良い関係だと思います。
「せっかく夫婦になったのだから、離婚すべきではない」とは思いません。出会った夫婦の中には、夫婦関係に固執するより、離婚するほうがお互い幸せになるだろうと感じることもあります。
しかし、多くの場合、危機を乗り越えることで関係が深まると感じています。危機を乗り越えることで、人として成長するのだろうと思います。「危機」とは、「危険」と「機会」です。「危機」を夫婦関係の発展の「機会」となるよう、全力でサポートします。