
執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士
システムとは、互いに影響を与え合っている複数人からなる集団と定義されます。夫婦システム、家族システムと表現します。範囲を広げると親族システムとして捉えることもできます。夫婦・家族の問題は、システムの歪みが原因と考えることもできます。
国に国境があるように、家庭にも境界があります。夫婦は元々、それぞれが異なる家庭(国)で育ちました。
結婚とは、それぞれが育った国を出て、2人で新しい国を創るスタートと言えます。結婚によって、育った国の住民ではなくなりました。新しい国と育った国の間に境界を引く必要があります。
境界があいまいなとき、外部から過剰な介入を招くことがあります。例えば、夫婦で決めるべきことが、夫(または妻)と親で決められて、妻(または夫)には事後報告されるようなケースです。
上記のように、夫婦で決定すべきことに他者(親など)が過度に介入してくる状態は、夫婦の関係に悪影響を与えることが多いです。配偶者に「あなたの家族は誰?」と言わせるかもしれません。その場は我慢してくれても、いつか飲み込めなくなって溢れ出すかもしれません。
昭和の時代は、家計を管理するのは妻でした。個人的な感覚ですが、それに疑問を持つ人は少数だったと思います。値の張る買い物をするときには妻にお伺いを立てます。「わが家の大蔵省を説得する」などと言ったりました。
現在では、お金の管理は家庭によって色々なスタイルがあるようです。絶対的な正解はなく、夫婦でしっかり合意できていることが大切です。
夫婦間の葛藤は子どもを巻き込み、三角関係や親子の役割逆転などに発展することがあります。
夫婦の関係がうまくいかなくなると、一方が子どもや実家の親との結びつきを強めることがあります。【夫 vs 妻と子】のような1対2の関係を三角関係といいます。
上記の三角関係になったとき、夫が拠り所を家庭の外に求めることがあります。拠り所に選ばれるのは、仕事、趣味、お酒、ギャンブル、浮気などです。セックスレスなどの不和としてあらわれることもあります。
上図の夫は、家庭で満たされない想いを仕事(趣味・酒・ギャンブル・浮気)で埋めています。このような歪んだ関係が継続すると、子どもの健やかな成長や発達が阻害されます。
夫婦の問題が大きくなると、子どもが親の親の役割を担おうとすることがあります。親子の役割逆転といいます。
夫婦ケンカが始まると「ごめんなさい!」と謝る子どもがいます。「いい子にするからケンカしないで!」と言う子どももいます。心がズキズキ痛みます。
子どもは本来、家庭を安全基地にして、様々な経験を積み重ねます。ときには傷つけられて、ときには悪いことをして叱られもするでしょう。それでも家庭が安全基地であれば適切なケアを受けて、再び冒険に向かえます。そうして成長・発達していきます。
親役割を担う子どもにとって、家庭は安全基地ではありません。そのような環境では、子どもは愛着(養育者との情緒的な絆)を築くことが困難になります。愛着を築けなかった子は将来、情緒的な問題、対人関係の問題を抱えることが懸念されます。