恋愛の悩み

執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士

恋愛には喜びや幸せがある一方で、悩みや不安もつきものです。当カウンセリングルームでは、既婚の夫婦だけではなく、恋愛中のカップルの相談も受けています。よくある恋愛の悩みについて紹介します。当ルームのカップルカウンセリングは、これらの悩み解決にもお役に立てます。

恋愛中のカップルの悩み

「お互い愛し合っているのに、なぜこんなにケンカばかりしてしまうのか」「普段は仲が良いのに、些細なことで喧嘩になり、大喧嘩になってしまう」という悩みは、夫婦・カップルに共通します。LGBTQ+カップルも同様です。

多くはコミュニケーションの問題が背景にある

数が多すぎて混乱するかもしれませんが、下記の問題の多くは、コミュニケーションの問題が背景にあることがほとんどです。

  • 信頼と不安:相手を信頼できない、相手の気持ちがわからない、浮気の心配をしてしまうなど、信頼や不安に関する悩みが挙げられます。これにより、嫉妬や不安感が強くなり、関係がギクシャクすることもあります。
  • 距離感の違い:パートナーとの物理的または心理的な距離感が問題になることがあります。たとえば、遠距離恋愛で会えない寂しさや、相手のプライベート空間に踏み込みすぎてしまうなど、適切な距離感を保つことに苦労するケースです。
  • 家族や友人との関係:恋愛関係が進展すると、相手の家族や友人との関係も重要になります。家族や友人との関係がうまくいかないことで、恋愛にストレスが生じることもあります。
  • 性的な悩み:性的な嗜好やペースが合わない、セックスレスの問題など、性的な面での悩みも少なくありません。このような悩みは、他の問題と絡み合うことが多いです。
  • 将来に対する不安:恋愛関係が進むにつれて、将来のことを考えることが増えます。結婚や同棲、子どもについての価値観の違い、経済的な不安などが関係に影響を与えることがあります。
  • マンネリ化:恋愛の初期の情熱が冷めてしまい、関係がマンネリ化することもあります。新鮮さや刺激がなくなり、相手への興味や関心が薄れてしまうことも悩みの一つです。
  • 自己肯定感の低さ:パートナーの前で自信を持てない、自分に価値がないと感じてしまうことも悩みの一つです。相手からの愛情を疑ったり、自分が愛されているか不安に感じたりすることがあります。

コミュニケーション問題の背景にあるもの

コミュニケーションの問題の背景には、例えば以下のような要因があげられます。

  • 価値観の違い:特に、お金の使い方や仕事に対する考え方、家族との関係についての意見が合わない場合、衝突が起きやすくなるようです。価値観の違いによる衝突が起きやすいのは、交際初期より中期以降です。交際初期は強い恋愛感情が優位なため、価値観の衝突が起きにくい傾向があります。スピード婚の場合は結婚後に問題となることもよくあります。
  • 期待と現実のズレ:お互いに無意識のうちに「こうしてくれるはず」「こうあるべき」という期待を持つことがあります。相手がその期待に応えてくれないときに、苛立ちや失望を感じることがあります。このズレが続くと、不満がたまり、コミュニケーションの障害となります。
  • 感情の表現方法の違い:お互いの感情を表現する方法が異なると、誤解や摩擦が生じることがあります。たとえば、一方がストレートに感情をぶつけるタイプで、もう一方が感情を内に秘めるタイプだと、コミュニケーションがうまくいかなくなることがあります。これにより、片方は「何も言ってくれない」と感じ、もう片方は「感情的すぎる」と感じることが多いです。
  • 感情のコントロールのむずかしさ:相手が「こんな些細なことで?」と思うことで、相手に強く反応してしまうことがあります。感情的な反応が続くと相手も防御的になり、さらに衝突が増える悪循環に陥ることがあります。ストレスや過去に負った心の傷が原因のこともあります。
  • 過去に負った心の傷や心理的な壁:過去に負った心の傷が原因で、相手に心を開けなかったり、防衛的な態度を取ったりしてしまうことがあります。以前の恋愛関係で傷ついた経験があると、現在のパートナーに対しても同じように心を閉ざしてしまうことがあります。
  • 非効果的なコミュニケーションの習慣:コミュニケーションの際に、すぐに「反論する」「否定する」「攻撃的になる」といった習慣があると、相手との対話が対立的になりやすいです。意見が異なる際に、強い感情表現を伴う激論を行った後、相互理解に至る文化を持つ家庭の話をしばしば聞く機会があります。その文化を家庭外で適用しようとすると、多くの場合上手くいきません。
  • 自己主張と自己防衛のバランスの欠如:相手に自分の意見や感情を伝えることは大切ですが、その一方で、相手の意見を尊重し、受け入れる姿勢も必要です。自己主張が強すぎると、相手が圧倒されたり、疎外されたと感じることがありますし、逆に自己防衛的になりすぎると、本当の気持ちを伝える機会が失われてしまいます。
  • 共感の欠如:相手の気持ちを理解しようとする姿勢が欠けていると、相手の言葉や行動の背景を理解できずにコミュニケーションがうまくいかなくなることがあります。共感は、相手の立場に立って考える力であり、これが欠けると相手との間に距離感が生じます。

カップルに限らず、人間関係を構築する土台はコミュニケーションです。関係を壊すのもコミュニケーションです。当ルームのカウンセラーは、家族心理学のコミュニケーション派という学派の理論に依拠しています。コミュニケーションの支援を得意としています。

恋愛中のカップルと結婚した夫婦の悩みの違い

恋愛中の悩みと結婚した夫婦の悩みには共通点もありますが、それぞれの関係の性質やステージにより異なる側面も多くあります。主な違いは以下の通りです。

長期的な視点と責任

結婚した夫婦の場合、関係は長期的な視点で築かれることが多く、経済的な責任や生活の安定、家族としての役割分担などが重要な要素になります。これに対し、恋愛中のカップルは、まだ結婚という長期的なコミットメントに至っていないことが多く、関係の将来性についての悩みが多いです。

コミュニケーションの内容

恋愛中のカップルは、感情や価値観の共有、愛情表現の方法などが主なテーマとなることが多いです。対して、結婚した夫婦は、日常生活に関する具体的な問題(家事の分担、子育て、親族との関係など)について話し合う必要が増え、これが悩みの原因になることがあります。

生活リズムと空間の共有

結婚した夫婦は、生活空間を共有することが一般的であり、生活リズムの違いやプライバシーの問題が大きなストレスになることがあります。恋愛中のカップルでは、まだお互いに別々の生活をしている場合が多く、共有する時間や空間についての悩みは比較的少ないですが、逆に「会う頻度」や「一緒に過ごす時間」に関する悩みが強くなります。

家族や親戚との関係

結婚した夫婦は、お互いの家族や親戚との関係が重要な問題になります。たとえば、義理の両親との関係や家族の行事、介護の問題などが悩みの種になることがあります。恋愛中のカップルでも家族の問題はありますが、結婚していないため、まだそこまで深く関わることがない場合も多いです。

経済的な悩み

結婚した夫婦は、家庭の経済的な安定が重要なテーマになります。収入の共有、貯蓄や支出、将来の計画(住宅購入、子どもの教育費など)について具体的に話し合う必要があります。恋愛中のカップルでは、経済的な話題は比較的軽く、各自の経済的独立が保たれていることが多いです。

性的な側面

恋愛中のカップルは、比較的性的な関心が強いことが多く、性的な相性や頻度についての悩みが多いです。一方、結婚した夫婦は、長期間の関係の中でセックスレスや性的欲求の低下など、異なる悩みが出てくることがあります。

子育てに関する悩み

結婚した夫婦の悩みの中には、子育てに関する問題が大きな割合を占めることがあります。教育方針の違いや子どもの問題行動、育児疲れなどが関係に影響を与えることがあります。恋愛中のカップルでは、まだ子どもがいないことが多く、この種の悩みは一般的ではありません。

マンネリと刺激

どちらの関係にも共通する問題として、関係がマンネリ化することがあります。ただし、結婚した夫婦の場合は、長期的な関係の中で新たな刺激を取り入れることが難しい場合も多いです。恋愛中のカップルでは、まだ新鮮な体験を共有しやすい段階にあるため、マンネリを解消する工夫が比較的容易かもしれません。

恋愛中の個人の悩み

カップルの問題ではなく、個人の問題として捉えるほうが望ましいケースもあります。ダメンズウォーカーと呼ばれる(もちろん男女逆の場合もあります)ダメなパートナーを選んでしまう悩み、恋愛に依存的大して好きでもない相手と付き合ってしまう悩みがあげられます。

ダメな(健全でない関係を形成しやすい)パートナーを選んでしまう

「ダメなパートナー」という表現は、ポリティカルコレクトネス的に望ましくないと思いますので、以降は「健全でない関係を形成しやすいパートナー」と表記することにします。あえて定義は具体的にしません。抽象的な表現に留めておくことにします。

以下は、研究や統計に基づくものではなく、一人のカウンセラーとしての個人的な経験による考察であることをあらかじめご了承下さい。

男性と女性に共通する要因

まず、男女共に「健全でない関係を形成しやすいパートナー」を選んでしまう要因として共通するものには以下のようなものがあります。

  • 自己肯定感の低さ:自分には良いパートナーを得る価値がないと感じることで、問題のある相手でも受け入れてしまう。
  • 過去の心の傷や家庭環境の影響:幼少期の家庭環境や親との関係が、無意識のうちに恋愛のパターンに影響を与えることがあります。
  • 依存的な性格:他人の評価や愛情に依存しやすい人は、自分に対して良くない影響を与える相手でも、関係を維持しようとしてしまいます。

次に性別ごとの傾向をあげます。

女性に多い傾向

  • 相手の保護欲求や支えたい気持ち:女性は、相手を「助けたい」「支えたい」と感じることが多く、問題を抱えた相手に対して母性的な感情が働くことがあります。その感情が、「自分が変えてあげられる」「自分がいないと相手はダメになる」と考させることがあります。
  • 自己犠牲的な行動:女性は自己犠牲的な傾向が強いとされており、相手のニーズを優先し、自分の幸せを後回しにすることが多いです。このような自己犠牲的な態度が、健全でない関係を長引かせる原因になります。
  • 社会的・文化的プレッシャー:女性は結婚や安定したパートナーシップを早く求められる傾向があるため、「今の相手を失ったら次がないかもしれない」という恐れから、問題のある相手に固執することがあります。

男性に多い傾向

  • 外見や性的魅力への偏り:男性は女性よりもパートナーの外見や性的魅力に重きを置く傾向があるため、相手の内面や性格よりも外見に引かれて「ダメな相手」を選ぶことがあります。その結果、内面的には自分に合わない相手と付き合い続けてしまうことがあります。
  • プライドと関係性の維持:男性はプライドが高く、「自分が選んだ相手は正しい」という自己評価を崩したくないという心理が働くことがあります。このため、問題のある相手との関係を続けることで、自分の判断を正当化しようとする場合があります。
  • 感情表現やコミュニケーションの不足:男性は感情を表現するのが苦手な場合が多く、相手とのコミュニケーション不足が問題のある関係を続ける原因となることがあります。問題が起きても、それを深く掘り下げて話し合うことを避ける傾向があるため、「ダメな相手」との関係を無意識のうちに続けてしまうことがあります。

恋愛依存や不適切な関係性の問題

恋愛に依存的で好きでもない人とつき合ったり、既婚者との交際などの不適切な関係性も、カップルの問題というより、個人の問題として取り組むのが望ましいです。以下で要因を考察します。

自己肯定感の低さと自己価値感の欠如

自己肯定感が低い人は、自分を十分に愛される価値がないと感じることが多いです。そのため、「自分を愛してくれる人は誰でも受け入れたい」という心理が働きやすくなります。このような状態では、たとえ相手が既婚者であったり、自分にとって良くない関係であっても、「少なくとも自分を愛してくれる」と感じてしまうことがあります。

孤独感や一人でいることへの不安

強い孤独感や「一人でいるのが怖い」という不安があると、不適切な相手との関係でもそれを続けてしまう傾向があります。恋愛依存の人は、たとえ相手が自分に合っていなかったり、愛情が薄いと感じていても、関係を保つことで孤独感を紛らわすことを求めます。既婚者との関係も、距離を保ちながらも一定のつながりが保てるため、同じような安心感を提供する場合があります。

他者への依存と未解決の感情

恋愛依存の人は、他者に対する依存が強く、相手を必要以上に重要視します。これは、幼少期の親との不安定な関係や過去のトラウマが原因であることが多く、「見捨てられ不安」や「愛されたい」という強い欲求により、不適切な関係でも手放すことができなくなります。既婚者との関係も、こうした「特別なつながり」を求める気持ちから選ばれることがあります。

スリルや刺激を求める心理

恋愛依存や不適切な関係に陥る背景には、日常生活での刺激不足を補いたいという欲求が含まれていることもあります。既婚者との関係は、社会的な規範に反するためスリルを感じやすく、恋愛依存の人にとっては「特別な関係」を感じさせる要素となることがあります。

現実逃避と非現実的な期待

恋愛依存者や不適切な関係を持つ人は、現実の問題から逃避したいという願望が強いことがあります。特に、既婚者との関係においては、「いずれ相手が自分を選んでくれる」という非現実的な期待を持つことがあります。恋愛依存においても、「相手が自分を変えてくれる」「相手の愛情が自分を満たしてくれる」という期待を持ちやすいです。

共依存的な関係の形成

恋愛依存の背景には、共依存的な関係が形成されやすいという要因もあります。共依存とは、お互いに相手の弱さや問題を支え合うことで成り立つ関係であり、健全でない場合が多いです。既婚者との関係も、この共依存的なパターンで進展することが多く、相手が「自分にはあなたしかいない」と言うことで、関係が長引くケースもあります。

過去のトラウマや家庭環境の影響

幼少期の家庭環境や過去の恋愛経験が、不健全な関係パターンに影響を与えることがあります。たとえば、親が不安定な関係を持っていたり、愛情不足で育った場合、その経験が無意識のうちに恋愛パターンに影響を与え、「問題のある相手」に惹かれてしまうことがあります。既婚者との関係も、このような過去のパターンが再現されることがあります。

まとめ

恋愛の悩みや問題には多くの種類がありますが、カップルの問題と個人の問題が複雑に絡み合うことが少なくありません。この記事では、恋愛中のカップルや既婚者の夫婦、さらには個人の恋愛依存や不適切な関係に至る要因について詳しく見てきました。それらの悩みには、「信頼と不安」「コミュニケーションの問題」「価値観の違い」など、さまざまな要因が関わっていますが、その根底には共通した心理的な背景が存在します。

カップルに共通する悩みとしては、主にコミュニケーションの問題や距離感の違い、将来への不安、家族や友人との関係などがあります。これらの悩みの多くは、互いの価値観のズレや感情表現の違い、非効果的なコミュニケーションスタイルから生じることが多いです。こうした問題は、カウンセリングを通じて解決の糸口を見つけることが可能です。

恋愛依存や不適切な関係性については、自己肯定感の低さや孤独感、未解決の感情、スリルを求める心理、非現実的な期待などが要因として挙げられます。これらの要因は、恋愛の相手や関係の選択に大きな影響を与え、結果として健全でない関係を選んでしまうことにつながります。恋愛依存や既婚者との関係など、不適切な恋愛関係に陥ることは、個人の問題として捉え、根本的な自己理解と改善に向けて取り組むことが重要です。

カップルカウンセリングや個人カウンセリングは、恋愛における健全なコミュニケーションを学び、自分自身のパターンを理解し、改善するための大切なサポートとなります。あなたの悩みを理解し、より良い関係を築くために、ぜひ一度ご相談ください。

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このページの執筆者
山崎 孝(公認心理師)

夫婦・カップルの相談を中心にカウンセリングを行っている公認心理師です。原因を個人内に求めるのではなく、コミュニケーション(相互作用)の変化を促すことで問題の解消・解決を目指すブリーフセラピーを主に用いてサポートします。

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