
執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士
恋愛には喜びや幸せがある一方で、悩みや不安もつきものです。当カウンセリングルームでは、既婚の夫婦だけではなく、恋愛中のカップルの相談も受けています。よくある恋愛の悩みについて紹介します。当ルームのカップルカウンセリングは、これらの悩み解決にもお役に立てます。
「お互い愛し合っているのに、なぜこんなにケンカばかりしてしまうのか」「普段は仲が良いのに、些細なことで喧嘩になり、大喧嘩になってしまう」という悩みは、夫婦・カップルに共通します。LGBTQ+カップルも同様です。
数が多すぎて混乱するかもしれませんが、下記の問題の多くは、コミュニケーションの問題が背景にあることがほとんどです。
コミュニケーションの問題の背景には、例えば以下のような要因があげられます。
カップルに限らず、人間関係を構築する土台はコミュニケーションです。関係を壊すのもコミュニケーションです。当ルームのカウンセラーは、家族心理学のコミュニケーション派という学派の理論に依拠しています。コミュニケーションの支援を得意としています。
恋愛中の悩みと結婚した夫婦の悩みには共通点もありますが、それぞれの関係の性質やステージにより異なる側面も多くあります。主な違いは以下の通りです。
結婚した夫婦の場合、関係は長期的な視点で築かれることが多く、経済的な責任や生活の安定、家族としての役割分担などが重要な要素になります。これに対し、恋愛中のカップルは、まだ結婚という長期的なコミットメントに至っていないことが多く、関係の将来性についての悩みが多いです。
恋愛中のカップルは、感情や価値観の共有、愛情表現の方法などが主なテーマとなることが多いです。対して、結婚した夫婦は、日常生活に関する具体的な問題(家事の分担、子育て、親族との関係など)について話し合う必要が増え、これが悩みの原因になることがあります。
結婚した夫婦は、生活空間を共有することが一般的であり、生活リズムの違いやプライバシーの問題が大きなストレスになることがあります。恋愛中のカップルでは、まだお互いに別々の生活をしている場合が多く、共有する時間や空間についての悩みは比較的少ないですが、逆に「会う頻度」や「一緒に過ごす時間」に関する悩みが強くなります。
結婚した夫婦は、お互いの家族や親戚との関係が重要な問題になります。たとえば、義理の両親との関係や家族の行事、介護の問題などが悩みの種になることがあります。恋愛中のカップルでも家族の問題はありますが、結婚していないため、まだそこまで深く関わることがない場合も多いです。
結婚した夫婦は、家庭の経済的な安定が重要なテーマになります。収入の共有、貯蓄や支出、将来の計画(住宅購入、子どもの教育費など)について具体的に話し合う必要があります。恋愛中のカップルでは、経済的な話題は比較的軽く、各自の経済的独立が保たれていることが多いです。
恋愛中のカップルは、比較的性的な関心が強いことが多く、性的な相性や頻度についての悩みが多いです。一方、結婚した夫婦は、長期間の関係の中でセックスレスや性的欲求の低下など、異なる悩みが出てくることがあります。
結婚した夫婦の悩みの中には、子育てに関する問題が大きな割合を占めることがあります。教育方針の違いや子どもの問題行動、育児疲れなどが関係に影響を与えることがあります。恋愛中のカップルでは、まだ子どもがいないことが多く、この種の悩みは一般的ではありません。
どちらの関係にも共通する問題として、関係がマンネリ化することがあります。ただし、結婚した夫婦の場合は、長期的な関係の中で新たな刺激を取り入れることが難しい場合も多いです。恋愛中のカップルでは、まだ新鮮な体験を共有しやすい段階にあるため、マンネリを解消する工夫が比較的容易かもしれません。
カップルの問題ではなく、個人の問題として捉えるほうが望ましいケースもあります。ダメンズウォーカーと呼ばれる(もちろん男女逆の場合もあります)ダメなパートナーを選んでしまう悩み、恋愛に依存的大して好きでもない相手と付き合ってしまう悩みがあげられます。
「ダメなパートナー」という表現は、ポリティカルコレクトネス的に望ましくないと思いますので、以降は「健全でない関係を形成しやすいパートナー」と表記することにします。あえて定義は具体的にしません。抽象的な表現に留めておくことにします。
以下は、研究や統計に基づくものではなく、一人のカウンセラーとしての個人的な経験による考察であることをあらかじめご了承下さい。
まず、男女共に「健全でない関係を形成しやすいパートナー」を選んでしまう要因として共通するものには以下のようなものがあります。
次に性別ごとの傾向をあげます。
恋愛に依存的で好きでもない人とつき合ったり、既婚者との交際などの不適切な関係性も、カップルの問題というより、個人の問題として取り組むのが望ましいです。以下で要因を考察します。
自己肯定感が低い人は、自分を十分に愛される価値がないと感じることが多いです。そのため、「自分を愛してくれる人は誰でも受け入れたい」という心理が働きやすくなります。このような状態では、たとえ相手が既婚者であったり、自分にとって良くない関係であっても、「少なくとも自分を愛してくれる」と感じてしまうことがあります。
強い孤独感や「一人でいるのが怖い」という不安があると、不適切な相手との関係でもそれを続けてしまう傾向があります。恋愛依存の人は、たとえ相手が自分に合っていなかったり、愛情が薄いと感じていても、関係を保つことで孤独感を紛らわすことを求めます。既婚者との関係も、距離を保ちながらも一定のつながりが保てるため、同じような安心感を提供する場合があります。
恋愛依存の人は、他者に対する依存が強く、相手を必要以上に重要視します。これは、幼少期の親との不安定な関係や過去のトラウマが原因であることが多く、「見捨てられ不安」や「愛されたい」という強い欲求により、不適切な関係でも手放すことができなくなります。既婚者との関係も、こうした「特別なつながり」を求める気持ちから選ばれることがあります。
恋愛依存や不適切な関係に陥る背景には、日常生活での刺激不足を補いたいという欲求が含まれていることもあります。既婚者との関係は、社会的な規範に反するためスリルを感じやすく、恋愛依存の人にとっては「特別な関係」を感じさせる要素となることがあります。
恋愛依存者や不適切な関係を持つ人は、現実の問題から逃避したいという願望が強いことがあります。特に、既婚者との関係においては、「いずれ相手が自分を選んでくれる」という非現実的な期待を持つことがあります。恋愛依存においても、「相手が自分を変えてくれる」「相手の愛情が自分を満たしてくれる」という期待を持ちやすいです。
恋愛依存の背景には、共依存的な関係が形成されやすいという要因もあります。共依存とは、お互いに相手の弱さや問題を支え合うことで成り立つ関係であり、健全でない場合が多いです。既婚者との関係も、この共依存的なパターンで進展することが多く、相手が「自分にはあなたしかいない」と言うことで、関係が長引くケースもあります。
幼少期の家庭環境や過去の恋愛経験が、不健全な関係パターンに影響を与えることがあります。たとえば、親が不安定な関係を持っていたり、愛情不足で育った場合、その経験が無意識のうちに恋愛パターンに影響を与え、「問題のある相手」に惹かれてしまうことがあります。既婚者との関係も、このような過去のパターンが再現されることがあります。
恋愛の悩みや問題には多くの種類がありますが、カップルの問題と個人の問題が複雑に絡み合うことが少なくありません。この記事では、恋愛中のカップルや既婚者の夫婦、さらには個人の恋愛依存や不適切な関係に至る要因について詳しく見てきました。それらの悩みには、「信頼と不安」「コミュニケーションの問題」「価値観の違い」など、さまざまな要因が関わっていますが、その根底には共通した心理的な背景が存在します。
カップルに共通する悩みとしては、主にコミュニケーションの問題や距離感の違い、将来への不安、家族や友人との関係などがあります。これらの悩みの多くは、互いの価値観のズレや感情表現の違い、非効果的なコミュニケーションスタイルから生じることが多いです。こうした問題は、カウンセリングを通じて解決の糸口を見つけることが可能です。
恋愛依存や不適切な関係性については、自己肯定感の低さや孤独感、未解決の感情、スリルを求める心理、非現実的な期待などが要因として挙げられます。これらの要因は、恋愛の相手や関係の選択に大きな影響を与え、結果として健全でない関係を選んでしまうことにつながります。恋愛依存や既婚者との関係など、不適切な恋愛関係に陥ることは、個人の問題として捉え、根本的な自己理解と改善に向けて取り組むことが重要です。
カップルカウンセリングや個人カウンセリングは、恋愛における健全なコミュニケーションを学び、自分自身のパターンを理解し、改善するための大切なサポートとなります。あなたの悩みを理解し、より良い関係を築くために、ぜひ一度ご相談ください。