
執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士
不倫からの関係修復をサポートします。関係修復に取り組む夫婦の多くは、カウンセリングを受けるまでに様々な解決の試みを行っています。しかし、それらの努力が実を結ばず、疲弊した状態でお越しになることがよくあります。傷ついた心、疲弊した心に寄り添いながら、関係修復のプロセスを進むお二人をサポートします。
不倫・浮気した人の中には、「パートナーとカウンセラーの2人から責められる」と誤解している人がいますが、カウンセラーは中立の立場で関わります。安心してお越し下さい。
修復のプロセスは以下の3つに分けることができます。
必ずしも上記の順番通りに進むわけではありません。行ったり来たりすることがあります。平行して進めることもあります。以下でもう少し掘り下げて説明します。
上図は傷つけた側と傷つけられた側の心の状態をイメージしたものです。関係修復を決めても、傷つけられた側の心はスタートラインの後方にいることがほとんどです。
どうすれば心の傷がケアできるのか?
答えの一つは心の傷の理解です。多くの場合、傷つけた側は傷を小さく見積もっています。傷ついた側は、その程度と思っているのかと思っています。理解が必要です。傷の理解については、以下のページをご覧下さい。
カウンセリングでは、心の傷の理解と二人の認識の差を埋めるサポートを行います。
傷つけられた心は複雑な感情でぐちゃぐちゃな状態ですが、感情の一つは不安です。傷つけられた側は、また起きるのではないかという強烈な不安を抱えて毎日を過ごしています。傷つけた側が求められることの一つは、不安を緩和する行動を自ら行うことです。
傷つけた側が「どうすればいい?」と傷ついた側に聞くのは悪手です。悪手ですが、よく起きています。どうすれば良いのかわからないからです。
カウンセリングでは、どのように行動を改めるのかを一緒に考えて、実現可能な形で合意するサポートを行います。
傷ついた心は、多くの場合、怒りや悲しみといった強い感情として表れます。そうした感情を前にすると、傷つけた側は圧倒され、うまく受け止められないことがあります。
しかし、その戸惑いや防衛的な態度が、さらに傷ついた側を苦しめてしまうこともあります。誠実に向き合っていないように見え、かえってケアとは逆の結果を招いてしまうのです。
それでもなお、心のケアの主役は、傷つけた側であるべきです。カウンセラーがその役割を代わることはできません。ときどき、傷つけた側がその役割を放棄し、ケアの役割をカウンセラーに委ねようとすることがありますが、その姿勢はかえって関係の修復を遠ざけてしまいます。
カウンセリングでは、傷ついた側の心のケアをていねいにサポートすると同時に、傷つけた側が「ケアする人」としての役割を果たし続けられるよう支えていきます。両者の心のケアを同時に進めながら、再構築の道のりをともに歩んでいくことが大切だと考えています。
「ケアの主役は傷つけた側」という考え方が、誤った形で受け取られてしまうことがあります。
傷つけられた側の人が「パートナーには責任があるのだから、自分は怒りをぶつけ続けてもいいのだ」と解釈し、毎日のように怒りをぶつけるケースです。パートナーは疲弊し、受け止める余力を失い、結果的に関係がさらに悪化してしまうことがあります。
怒りが抑えられないのは、深く傷ついた心があるからこそであり、そのこと自体を責める必要はありません。やむを得ないことでもあります。
ただし、心のケアは「怒りをぶつけることによって」成し遂げられるのではなく、その奥にある悲しみや苦しさ、むなしさといった感情を理解されることによって進んでいきます。
そのためにも、カウンセリングでは、怒りの背景にある本当の気持ちに気づき、それを安全な場で表現できるようサポートしていきます。そして、パートナーとの対話が感情のぶつけ合いではなく、心の通い合いへと変わっていくことを目指します。
関係の修復を果たすには、いつまでも被害者・加害者関係でいるわけにはいきません。不倫に限れば被害者・加害者関係が変わらないのはやむを得ませんが、夫婦関係全体では、関係修復のパートナーシップを確立する必要があります。
夫婦に限らず関係を育てる土台はコミュニケーションです。良好な関係には良好なコミュニケーションがあります。悪い関係には悪いコミュニケーションがあります。不倫に限らずコミュニケーションのサポートは夫婦・カップルカウンセリングの要と言えます。
参考ページ:コミュニケーションの改善
不倫の背景に悪化した夫婦関係が存在することがあります。個人の問題が存在することもあります。2度と不倫問題を起こさないために、これまでの夫婦の関係を振り返ったり、個人の問題を振り返りが求められるケースもあります。
人間関係で傷ついた心を癒すには、安心できる人間関係が必要です。
パートナーの不倫による心の傷は深く、他人に話すことでつらい記憶が蘇り、さらに苦しむこともあります。興味本位の質問や「あなたにも原因があるのでは?」と言われることで、さらに傷つくこともあります。「もう離婚しなさい」といった無神経な言葉に傷つくこともあります。
話したいことを自由に話せる。話したことを否定されずに受け入れられる。それが安心・安全な人間関係です。こうした関係の中で、心の傷が癒えていきます。
パートナーを傷つけたこと、その傷の深さへの戸惑い、どうすれば良いのか分からない混乱の中にいるかもしれません。パートナーの感情を受け止めるのがつらく、疲弊しているかもしれません。それでも、傷つけたのは自分だという罪悪感から、その苦しさを口にできないかもしれません。
パートナーの気持ちを理解し、その傷を癒して、どのように再構築するかを考えて実践を重ねるには、カウンセリングが役立つはずです。
不倫・浮気の相談にお越しになる夫婦・カップルの多くは、2人だけで何とかしようと努力されていることがほとんどです。その努力は尊いものですが、カウンセラーの立場から申し上げますと、早めにお越しいただきたいです。
その過程で、もがき、苦しみ、傷ついて、2人ではどうしようもなくなって、サポートを求めてお越しになります。不倫の発覚直後より、さらに悪化した状態でお越しになることもめずらしくありません。
病気は早めの対処が回復を早めます。不倫による傷や関係悪化も同じです。早めに専門のサポートを受けると、早期の回復が期待できます。
第三者へ話すことに強い抵抗を感じるのは当然のことだと思います。それでも、後々のことを考えて、早めの相談をお勧めします。