
執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士
パートナーの不倫・浮気を初めて知ったとき、多くの人は、ショック、混乱、怒り、深い悲しみなどが入り交じった強烈な感情に翻弄されます。この状態で最初に考えたいのは、自分を守ることです。
自分を守るためには、すぐに何かを決断しようとしないこと、感情に任せて行動を起こさないことが大切です。そのような行動は、後に後悔する結果を招きかねないからです。まずは、心を落ち着けること、少しでも冷静さを取り戻すことです。
パートナーの不倫を知ったとき、多くの人は感情の嵐に巻き込まれ、冷静さを失います。やむを得ないことで、責められることではありません。しかし、この状態で何かを決めたり、行動を起こしたりするのは、おすすめできません。以下のようなリスクがあるからです。
まずは心を落ち着けることに注力して、状況を客観的に見られるようにするのが望ましいです。後悔のない選択をするための土台となり、感情を整理する第一歩にもなります。
心を落ち着ける方法の一つとして、以下の3ステップを紹介します。
感情が高ぶっているときは呼吸が浅くなりがちです。深呼吸をして心を落ち着けることが効果的です。ここでは 4-7-8 呼吸法を紹介しますが、この呼吸法に限りません。ゆっくり深く呼吸することです。
4秒かけて鼻からゆっくりと息を吸い込み、7秒間息を止め、8秒かけて口からゆっくりと吐き出します。これを3〜4回繰り返します。心拍数が安定し、少しずつ気持ちを整えられるはずです。
コツは絶大な効果を求めないことです。ほんの少しでも落ち着き度が上昇すれば成功です。ほんの少しの積み重ねです。以下も同様です。
感情が暴走しているときは、現在の状況が見えにくくなり、過去の出来事に意識が引きずられることがあります。そのようなときは、次のように現実を確認する声かけを試してみましょう。
混乱しているときは、意識が過去または未来に引きずられがちです。安定しているときは、意識も身体も現在にいて一致しています。意識を現在に戻すことで落ち着きを取り戻しやすくなります。
感情を頭の中だけで整理するのは難しいことがあります。そんなときは、紙に感情を書き出してみましょう。
ノートや紙に、今その瞬間感じていることを書き出します。「怒り」「悲しみ」「絶望」「裏切られた感情」など思いつくままに書き出します。他人に見せるものではありません。体裁を気にする必要はありません。感情や感覚を言語化すると、心が少しずつ整理されていきます。
書き出すことで、自分の心を少し離れて見る視点、自分自身を俯瞰する視点を持ちやすくなります。
心を落ち着けるための方法には様々なものがあります。カウンセリングでは、その人に合った方法や組み合わせなどを一緒に考えながら対処します。
感情を抑えることは必要ですが、過度に抑え込むと逆効果になることがあります。感情を否定せずに受け入れた上で、事態を悪化させかねい言動を抑えると考えましょう。
感情を否定せず、「私は今、怒りを感じている」「とても悲しい」と自分の感情を受け止めます。感情は回避するとかえって大きくなり、直面すると扱える大きさになりやすいものです。感じることを恐れず、ゆっくりと受け入れることが、心を落ち着ける近道です。
重要なのは、パートナーや不倫相手にどう対処するかではありません。自分自身を守ることです。体調が悪くなったときは医師に相談したり、信頼できる友人やカウンセラーに話を聞いてもらうなど、まずは心身の健康を保つことを優先しましょう。
混乱した状態での決断は後悔を招きやすいことは最初に触れました。「今はまだ結論を出さなくていい」「落ち着いたときにもう一度考えよう」と自分に言い聞かせ、十分に時間を取るのが望ましいです。
自力で心を落ち着ける方法について述べてきましたが、自力での対処がむずかしいときには、家族や友人の力を借りることも考えて下さい。また、カウンセリングも選択肢の一つになります。カウンセリングは以下の点で役に立ちます。
不倫は非常にデリケートな問題で、友人や家族に話すことに抵抗を感じる場合もあります。非日常的な場で行われるカウンセリングだからこそ、オープンに話せると感じる人は少なくありません。
心を落ち着ける具体的な方法(呼吸法や感情の整理法)を一緒に実践し、冷静さを取り戻すためのステップをサポートします。感情が落ち着いてきたときに、次のステップを考えることができるよう促します。
友人や家族は自分の味方です。そうではない中立の第三者からのフィードバックを求めて来談したとおっしゃる方は少なくありません。そう思うのは、自責の念にとらわれているからかもしれません。心の落ち着きをある程度取り戻せたからこそ、そう思えるのかもしれません。その人の状態に合ったサポートを提供します。
不倫の事実を知ったとき、多くの人は「自分に何か問題があったのか」「自分が悪かったのか」と自分を責めることがあります。自己評価の低下に対処しながら、あなた自身の価値を再確認し、自分を守るために何が必要かを一緒に考えます。
感情が高ぶっている状態では、離婚や別居などの大きな決断を焦ってしまうことがあります。冷静に状況を整理しながら、長期的な視点での行動を考えるサポートを行います。
パートナーの不倫は、フラッシュバックなどのトラウマ症状を引き起こすことがあります。このような心の傷に対して具体的な対処法を用いながら心のケアを促進します。