思い切って豪華な夫婦旅行に行きました。妻も楽しんでくれたようです。しかし、旅行後の妻は、数日間は笑顔が見られましたが、徐々に不機嫌モードに戻っていきました。夫は「あれだけがんばったのに、なぜ妻は機嫌を直してくれないのだろう」と不満を募らせています。
妻が望んでいるのは、日々の小さな気遣いや思いやりでした。旅行以降、夫から何もありません。何もなかったように過ごしています。その夫の姿を見た妻は、「理解してもらうのは不可能なのだろうか」と絶望的な気持ちになっています。
妻を傷つけてしまった夫。心のケアと信頼を取り戻す努力を一生懸命やっているのに、妻は許してくれない、努力を認めてくれない。このように夫が困っているケースがしばしば見られます。原因の一つに、夫の努力と妻の求めるものの不一致があります。
夫婦間の期待やニーズの不一致の例

「こんなにがんばっているのに妻は許してくれない」という状況が続いている場合、夫の行動は決して悪くはないのだけれど、妻にとって優先順が高いのはそれではないというケースです。的に矢は当たっているけれど、当たっているのは端であり、中心ではないと例えることができます。
冒頭の例は、「仕事・趣味・友人を優先しがちな夫」と、そのことにより、「さびしさ・むなしさ・無価値感などを抱えて不満を抑えるのがむずかしくなった妻」といった状況を予想することができます。
この状況において、夫婦間の期待やニーズに生じている不一致は以下が考えられます。
質と量の不一致
平日にまとまった時間を取るのがむずかしい夫は、休日は家族と長時間一緒に過ごすことを心がけている。しかし、その時間の多くはテレビやスマホに費やされて、妻や子供との関わりが少ない。妻は、少しの時間でも良いので、日々会話する時間がほしいと思っている。
物質的な満足と精神的な満足
仕事で成功して高い収入を得ている夫は、家や車、ブランド品など、物質的に家族を満たそうとする。それが愛情の証と考えている。しかし、妻は、一緒に笑ったり、悩んだりするなどの感情的なつながりをより欲している。
コミュニケーションスタイルの違い
夫は、妻の話は相談であり、何らかの解決を求められていると考えている。すぐに解決策を提示しようとする。解決に向かわない会話に苛立ちを感じる。しかし、妻は、まずは自分の気持ちを理解してほしい。言葉を交わすことに意味を感じていて、解決を望んでいないこともある。
その他の不一致の例
- プライバシーと親密さのバランスのケース(いつも2人でいたい、1人の時間もほしい)
- 将来設計の不一致のケース(子どもの教育、他)
- 家事分担の不一致のケース(分担の考え方、必ずしも平等にこだわらない、他)
深刻な問題における不一致
不倫のような大きな問題において、よく見られる不一致には以下のようなものがあります。
- 傷つけた側が傷ついた側の心の傷の大きさを見誤ること
- 何をすれば許してもらえるのか傷ついた側に提示を求めること
傷つけた側は、心からの謝罪が受け入れられたら、再構築に向かってスタートを切れると考えるケースが多く見られます。傷つけられた側は、心が骨折したような状態です。骨がひっつくまで再構築のスタートを切れません。
傷つけた側が「どうしたら許してくれる?」と解決策を求めるケースがあります。傷つけられた側にとっては、「傷つけられた側が解決策を提示しなければいけないのは理不尽でしょ」となることがあります。
不一致の解消に向けて

的の中心を射抜くにはどうすれば良いのか。
まずは、コミュニケーションです。うまくいってないときほど、「きっと、妻は〜だろう」の予想は外れるものです。「○○しようと思ってるんやけど、どう?」などと、妻の気持ち、期待などを理解しようとする姿勢でのコミュニケーションが必要です。
ただし、「どうしたら許してくれる?」のように、妻に解決策の提示を求める姿勢は望ましくありません。あくまで自分で考えて、この考えはどう?という姿勢です。
関係がより悪化して、以上のようなコミュニケーションがむずかしい場合は、カウンセラーなどにサポートを求めるのが望ましいです。カウンセラーは2人のコミュニケーションが良化するための触媒となってサポートを行います。