カウンセリングは多くの人にとって「何となくわかるけど、詳しくはよくわからない」という感じだと思います。カウンセリングと似た対人支援に心理療法とコーチングがあります。それらと比較する形でカウンセリングとは何か?を説明します。
対象とする人
対象者は心の健康度による違いがあります。
カウンセリングが対象とするのは、精神的な健康度が比較的高い人です。
心理療法が対象とするのは、精神疾患の方など精神的な健康度が低い人です。
コーチングが対象とするのは、精神的な健康度が高い人です。
簡潔な言葉で表現すると上記のようになりますが、対象とする人の領域は重なる部分が少なからずあります。現在では、カウンセリングと心理療法は、ほぼ同じ意味で使われています。
支援の目的
カウンセリングは職業相談や進路相談など、重篤でない悩みの援助から始まりました。カウンセラーとの対話を通じて自己や他者の理解を深める。悩みの対処を通じて人間的な成長を目指すという面もあります。
心理療法はフロイトの精神分析から始まりました。精神分析は神経症の治療を目的としています。その後、フロイトの理論を肯定または否定する形で様々な学派が生まれ発展しています。いずれも主要な目的は治療です。
コーチングの目的は目標達成です。目標に向かうプロセスを支援します。
カウンセリングを重ねるうちに目標ができて、コーチング的な関わり移行することがあります。目標達成の過程で不安や悩みが生じて、カウンセリング的に関わることもあります。対人支援職は、カウンセリングとコーチングの双方を習得することが望ましいと思います。
主役はクライエント
クライエントが主役であるのは3者に共通しています。カウンセラー(またはセラピスト・コーチ)は主役を支える役割です。
コーチングでは、「クライエントはマラソンランナー、コーチは伴走者」という比喩がよく使われます。
認知行動療法では、協同的経験主義という言葉が使われます。クライエントとセラピストは生徒と先生ではなく、協同して取り組みます。
カウンセリングも同様です。
エンパワーメントという言葉あります。クライエントが自分の力に気づき、それを自分で引き出して、自己決断できる力を持てるようになることをエンパワーメントと言います。カウンセラーは、常にエンパワーメントを意識してクライエントに関わります。
3つの共通点
セッションは対話によって進められます。共通するのは、双方向、継続性、個別対応の3つです。
クライエントとカウンセラー(またはセラピスト・コーチ)は、お互いに対等な立場で双方向の対話によってセッションを進めていきます(双方向)。
解決・目標達成などに到達するまで継続的に関わっていきます(継続性)。
クライエントや問題に応じた対応を行います(個別対応)。
話す量とセッションの構造化
カウンセリングとコーチングは、「教える」よりクライエントから「引き出す」ことを重視します。クライエントが自分の想いを言語化するのを支援することにより、エンパワーメントします。
感じていることを言語化するとき、気づきが起きやすくなります。心が整理されて迷いがなくなり解決したと実感するケース。気づきが意欲を生み、解決や達成に向かう行動につながるケース。解決の形は様々です。
クライエントが話すことが重要なので、当然クライエントの話す量が多くなります。話す量は、クライエントが7から8、カウンセラー(コーチ)が2から3くらいの割合になります。
認知行動療法は心理教育を重視します。そのためセラピストの話す量が多くなります。5:5程度になります。ただし、心理療法は多くの学派があるのでこの限りではありません。
カウンセリングのセッションは構造化されていません。クライエントは自由に考えて自由に話します。カウンセラーはその営みに寄り添います。
認知行動療法は、1回のセッションも全体の流れも構造化されています。セッションでは毎回アジェンダを設定して、アジェンダに沿って進めます。全体の流れも、初期、中期、終結期、フォローアップと構造化されています。
コーチングは、コーチングサイクルという構造化された流れに沿って進めます。コーチは常にコーチングサイクルを頭に置いてセッションを進めます。
まとめ
ざっくり言うと、カウンセリングの目的は「悩み相談」、心理療法は「治療」、コーチングは「目標達成」という違いがあります。ただし、それぞれの領域には重なり合う部分があります。
カウンセリングという言葉は現在、心理療法も含む広い意味で使われています。
悩みが解決に向かうと、目標達成に向かう欲求が芽生えることがあります。目標達成に向かう過程において、不安や悩みの対処が必要になることがあります。重篤な場合を除くと、カウンセリングとコーチングを区別する必要はないのかもしれません。
セッションは対話によって進められます。特徴は、双方向・継続性・個別対応です。クライエントが主役で、カウンセラー(セラピスト・コーチ)は伴走者です。クライエントがエンパワーメントすることを支援します。
今回の内容は、主に個人に対する支援に関わるものでした。次は夫婦・カップルの支援について投稿したいと思います。