夫婦カウンセリングを妻だけ・夫だけで

執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士

カウンセリングを妻だけで、夫だけで
妻または夫1人だけで受ける夫婦カウンセリング

夫婦カウンセリングは夫婦2人の同席が必須という先入観があるかもしれません。必ず2人でなければならないということはありません。家族療法によるカウンセリングは、家族・夫婦の関係性・相互作用に焦点を当てます。1人でも夫婦カウンセリングを行うことが可能です。

1人で来談される理由

夫婦カウンセリングを考えるのは通常、夫婦関係がうまくいっていないときです。「第三者を交えて話し合いたい」と2人が一致している場合は2人で来談されます。しかし、すべての夫婦がそうではありません。

うまくいってない相手に夫婦カウンセリングを持ちかけるのは、心理的な負担が大きいものです。「イヤな態度をされるかも」「怒らせてしまうかも」などのプレッシャーがあると、切り出すのを躊躇するのは仕方ありません。1人でお越しになるケースの一つです。

1人で夫婦関係の改善に取り組みたい方もいらっしゃいます。例えば、うまくいかないのは自分が悪いと自責的になっている方。そもそも改善を望んでいないけれど、子どもが自立するまでは安全な家庭を維持したいといったケースです。

1人で来談される理由には、以下のようなものがあります。

  • 夫(または妻)は拒否するだろう
    • 夫(または妻)は拒否すると思う。切り出すのが怖い。とはいえ、このままでは苦しい。一人でできることがないか相談したい。
  • まずは自分の気持ちや考えを整理したい
    • 夫婦カウンセリングを提案する前に、自分の気持ちや考えを整理したい。整理した上で夫(または妻)に提案したい。
  • コミュニケーションスキル
    • 夫(または妻)に、自分の気持ちや考えを理解してもらうためのコミュニケーション、または、夫(または妻)の気持ちや考えをより理解するためのコミュニケーションのサポートを受けたい。
  • 夫(または妻)の言動への対処
    • 夫(または妻)の言動に対する適切な対処方法を知りたい。健全な関係のためのサポートを受けたい。
  • 自己理解と改善
    • 自分の考えや行動が夫婦関係に悪影響を及ぼしているのであれば、それが何かを理解して、改善するサポートを受けたい。
  • 関係改善は望まないが安定した生活を送りたい
    • 関係の改善を目指さないまでも、子どもが成人するまでの間、できるだけストレスなく共に生活する方法を探求します。

カウンセラーから個人カウンセリングを提案するケース

(2人での)夫婦カウンセリングを希望されても、カウンセラーから個人カウンセリングを提案するケースがあります。最初に挙げられるのは、暴力が起きているケースです。

  • 暴力が起きている場合
    • 夫婦カウンセリングでの会話が、カウンセリング後の暴力を誘発する懸念がある場合は、2人同席でのカウンセリングは行いません。
  • 強い感情表現と衝突が繰り返されるとき
    • 例えば、一方が話すと他方が強い調子で否定することが連続する場合です。そのような場合は、「妻のカウンセリング → 夫のカウンセリング → 夫婦カウンセリング」の順で行うなどの提案をさせていただく場合があります。

1人での夫婦カウンセリングとは

家族療法では、夫婦や家族間の相互作用に焦点を当てます。上図の「赤の矢印」の部分です。問題が起きているときには、相互作用の悪循環が起きています。相互作用の悪循環を断ち切ることで解決を目指します。1人のカウンセリングでも、悪循環に働きかけることが可能です。

黄色の部分は、個人の内面に焦点を当てるカウンセリングです。相手から何らかの刺激(上図では赤の矢印)を受けると、思考が生じます。思考に伴う行動を起こします。その行動は相手への刺激になります。相手にも同じことが起こります。それが繰り返されます。

それが良循環であれば、関係は良好です。悪循環であれば、関係が悪いとなります。

悪循環を好循環に変えるには、すべての要素を同時に変える必要はありません。どこか一つが変われば、それを契機に他の要素も変化を始めます。夫婦カウンセリングに取り組むには、2人同席が必須というわけではありません。

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