キャッチボールのコミュニケーション

執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士

良いコミュニケーションには、キャッチボールとの共通点があります。双方向性、理解と調整、距離感、注意と集中、協調性があげられます。

コミュニケーションとキャッチボールの共通点

双方向性

キャッチボールは一方からボールを投げ、もう一方が受け取り、また投げ返すやり取りを繰り返します。コミュニケーションは、話し手と聞き手がお互いにメッセージを交換し合う双方向の営みです。

理解と調整

キャッチボールでは、相手に合わせてボールの速さや方向を調整します。コミュニケーションも、相手が理解しやすいように、言葉や話し方を調整します。相手の反応を見ながら、さらに伝え方を微調整することもあります。

専門家が一般の人に専門分野について伝えるとき、専門用語を避けて一般的な言葉を用いて話します。しかし、専門家が平易と考えた表現は、一般の人にとってまだ難しいことがあります。その場合、専門家はより平易な表現を選択します。

距離感

キャッチボールでは適切な距離感が重要です。コミュニケーションにおいても、心理的な距離を保ちつつ、お互いに影響を与え合う関係性が求められます。

家族や親しい友人との会話では、プライベートな話や感情を共有するような内容が多くなります。それほど親しくない人には通常、そのような話はしないでしょう。

注意と集中

ボールを受け取るには、投げられてくるボールに注意を払い集中する必要があります。コミュニケーションでも同様に、相手の言葉に耳を傾け、理解しようと注意を払うことが肝心です。

パートナーの話をスマホやテレビを見ながら聞いていて、「ちゃんと聞いて」と言われた経験は、多くの人があるはずです。

協調性

キャッチボールは、相手が取りやすいところ(胸のあたり)に投げます。また、相手が準備できているのを確認して投げます。コミュニケーションでは、相手が理解しやすい表現で、聞き取りやすい声の大きさやスピードで行います。

ノック、卓球、ドッジボール

良いコミュニケーションをキャッチボールに例えるとき、悪いコミュニケーションの喩えに、(野球の)ノック、テニス、ドッジボールを用いることがあります。愛好者の皆様申し訳ありません。

ノックのコミュニケーション

次から次へと話し続けて、相手が話すタイミングを得られない状態を、ノックに喩えることがあります。聞き手は次から次へと飛んでくるボール(話)を取る(聞く)のに精一杯で、自分の考えを話すに至りません。

ただし、ノックは目に見える状態を喩えているだけです。野球のノックでは、ノッカーと野手は言語・非言語によるコミュニケーションによって技術の向上を図っています。

卓球のコミュニケーション

強い言葉をぶつけ合っている状態を喩えています。強いストロークの激しいラリーをイメージしてます。

これも目に見える状態を喩えているだけです。卓球に限らずスポーツにおける激しいラリーは、それ自体が非言語コミュニケーションとも言えます。

ドッジボールのコミュニケーション

相手にぶつけるイメージがわかりやすいです。

比喩を用いると話しやすくなる

カウンセリングでは、比喩表現をよく用います。受け取ってもらいやすいことに加えて、ユーモラスに響いて空気を温めてくれることもあります。

パートナーから「その言い方は気分が悪い」と言われるより、「ノックを受けてるみたい」と言われるほうが受け取りやすいと思います。「愛ちゃんのスマッシュみたい!」と言ったら、「サーッ!」と返ってくるかもしれないのは関西だからでしょうか。

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