休職中の夫を責めるようなタイトルになっていますが、夫を責める意図はまったくありません。また、ストレスを感じる妻を責める意図もまったくありません。厳しい状況の中、ストレスと上手く付き合う方法を考える機会になればと思っての投稿です。
不登校の子どもにも見られることですが、回復のプロセスにおいて、好きなこと、やりたいことはできるけれど、やらなければならないことができない時期があります。その時期を経て、やらなければならないことができるようになっていきます。
しかし、その状態の子を見る親、その状態の夫を見る妻がもどかしさと感じるのは、ときに苛立ちを感じるのは、やむを得ないことであり、責めることはできません。責めることはできませんが、それで終わるのではなく、望ましい対処を考えたいところです。
夫が職場から離れている間、家庭内での役割が一変し、今まで以上に多くの責任を一人で背負い込んでいるかもしれません。同時にさまざまな不安を抱えて、感情のコントロールがむずかしくなっているかもしれません。そのような気持ちが少しでも楽になればと思います。
休職中の夫が元気そうに見える理由
安心・安全な家庭環境を作ったのは妻の功績
メンタルヘルス不調の原因は様々で特定は困難ですが、休職しているケースでは、職場環境も原因の一つであることに間違いはないでしょう。職場から離れることで罪悪感が増す人もいますが、徐々に気持ちが楽になることが多いです。
元気そうに見えるのは、ストレス因から物理的に距離を取れていることが大きいです。特に適応障害は、ストレス因が明確であり、ストレス因から離れると改善されることが多いです。うつ病の治療の最初の一歩は休養です。元気そうに見えるのは、家庭が休める場所であるからです。
夫にとって家庭が安心・安全な環境であるのは、妻であるあなたが普段から環境を整えてくれているからです。あなたの功績であることは間違いありません。
やるべきこと、やりたいこと
私たちの日常の行動は、「やるべきこと」と「やりたいこと」に分けることができます。調子が良いときは、「やるべきこと」と「やりたいこと」の両方を行っています。メンタルヘルス不調の状態では両方ができません。
やるべきこと | やりたいこと | |
---|---|---|
健康なとき | ○ できる | ○ できる |
不調のとき | × できない | × できない |
不調から一足飛びに健康にはなりません。徐々に回復しながら健康に向かいます。回復のプロセスでは、まず「やりたいこと」ができようになります。回復度が上がるにつれて「やるべきこと」が徐々にできるようになってきます。
やるべきこと | やりたいこと | |
---|---|---|
健康なとき | ○ できる | ○ できる |
回復途中 | × できない | ○ できる |
不調のとき | × できない | × できない |
元気そうに見えるのは、家庭が休養にふさわしい場所になっていること、好ましい方向へ向かっているサインと受け止めることもできます。
以上の説明は、坂本真佐哉(神戸松蔭女子学院大学教授)先生による2階建理論を基にしています。
夫の休職によって妻が感じるストレスの原因
家庭内の役割分担の変化
夫の休職により、家庭内の役割分担が大きく変化することがあります。夫が担っていた家事や育児の多くを、妻が引き受けなければならなくなるかもしれません。
夫の態度や行動へのイライラ
夫がぼんやりとテレビを見ていたり、ゲームに熱中していたりすると、「何も手伝ってくれない」と感じるかもしれません。夫がメンタルヘルスの問題を抱えていることで、感情のコントロールがむずかしくなっているケースもあります。些細なことで怒ったり、逆に無気力になったりすることがあります。
夫の世話による疲労
休職中の夫の世話は、肉体的にも精神的にも妻の負担となります。服薬管理など細かいサポートを必要とするケースもあるでしょう。休職に伴う様々な手続きが妻の役割となることもあります。
経済的な不安
夫の休職は、経済的な不安を引き起こします。休職中は、夫の収入が減少したり、場合によっては無収入になったりすることがあります。先行きが見えない状況では、将来への漠然とした不安を感じずにはいられません。
自身のメンタルヘルスへの影響
様々なストレス要因が重なることで、妻もまた、メンタルヘルスの問題を抱えるリスクがあります。1人で抱え込みすぎずに適切なサポートを求めることが望ましいです。
長期戦に備えて肩の力を抜く
長期戦と言われると、絶望的な気持ちになるかもしれません。しかし、焦って復帰して更に悪化するのは悪い方の典型的なパターンです。焦らず腰を据えて取り組むことが、結果として早期の復帰につながることが多いです。
セルフケア
夫のサポートと同様に、ときにはそれ以上に、自分自身の心のケアを大切にしてください。夫に安心・安全な環境を提供しているのだから、あとは本人次第の気持ちで良いかもしれません。
あなたのメンタルが不安定な状態は、夫に罪悪感を感じさせたり(多少は感じなさいという気持ちは大いに理解できますが)、居心地の悪い場所になって回復にマイナスになることがあります。
セルフケアをお勧めします。以下のサイトは厚生労働省が運営するものです。参考になれば幸いです。カウンセリングでも様々なセルフケアを提案させていただいています。
- 参考サイト:こころの情報サイト
- 参考サイト:こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
友人、家族、行政の相談機関、民間の相談機関など、利用できるものは積極的に利用されるのをお勧めします。
一緒に医療機関を受診する
不安とは、よくわからないものに対して生じる感情です。嫌なことでも、実態や先行きがわかれば、不安な気持ちのサイズが小さくなって、できることに気持ちが向かいやすくなります。夫に受診に同行して、医師に不明点を質問する機会を持つことも役に立つはずです。
- 参考ページ:【うつ病】夫婦が共倒れにならないために
- 参考ページ:【適応障害】夫婦が共倒れにならないために
まとめ:夫の休職に伴う変化とストレス対処
- 坂本真佐哉, 黒沢幸子 (編) 2016 不登校・ひきこもりに効くブリーフセラピー 日本評論社
- 浅井逸郎 (監) 2021 「適応障害」って、どんな病気? 大和出版