
執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士
夫婦関係の悪化は多くの場合、コミュニケーションのすれ違いから始まります。コミュニケーションは単なる会話ではなく、お互いの気持ちや考えを理解し合い、信頼関係を築くための大切な手段です。
しかし、日常生活の忙しさや小さな誤解が積み重なることで、次第に会話が減り、感情を伝えることすら難しくなってしまうことがあります。
このページでは、夫婦間のよくあるコミュニケーションの問題やその背景にあるパターンを解説し、具体的な改善方法やカウンセリングでのアプローチについてご紹介します。
相手を理解し、自分自身とも向き合うことで、二人の関係は少しずつ変わり始めます。共に良いコミュニケーションを築き直し、安心できる夫婦関係を取り戻すための第一歩を踏み出しましょう。
コミュニケーションのスレ違いや誤解は、どの夫婦にも起こり得るものです。むしろ、起こらない夫婦の方がめずらしいでしょう。一つひとつは小さなものであっても、積み重なることで大きな溝になることがあります。
以下は、よく見られる夫婦コミュニケーションの問題です。
これらの問題は、どれか一つだけが単独で起きることもあれば、連鎖的に引き起こされることもあります。例えば、「会話が噛み合わない」ことが続くと、「喧嘩が絶えない」状態になり、やがて「距離を置くようになる」「気持ちをため込む」といったケースです。
良いコミュニケーションを阻む原因には、次のようなものがあります。
私たちは、問題が起こると解決を試みます。その解決の試みが、問題を維持してしまうことがあります。家族心理学では「偽解決」といいます。偽りの解決とは、うまく言ったものです。
以下の図は偽解決の例です。
子どもが生まれたばかりの夫婦をイメージして下さい。妻は夫に家事・育児に参加してほしいのですが、夫は仕事が多忙で妻の要望に応えられません。
夫婦カウンセリングの目的は、このような悪循環を良循環に変えるお手伝いと言っても過言ではありません。
コミュニケーションは関係を育む土台です。セックスレスや不倫・浮気となど夫婦の問題には、背景にコミュニケーションの問題があるケースが少なくありません。
それでは、良いコミュニケーションとは具体的にどのような状態を指すのでしょうか。
夫婦関係における「良いコミュニケーション」とは、単にたくさん会話をすることや意見が一致することだけを意味するわけではありません。
大切なのは、お互いの気持ちや考えが「伝わり」「受け取られ」「理解される」ことです。コミュニケーションは相互作用であり、相手と自分、双方がそのやり取りに満足感や安心感を得られる状態が理想です。
良いコミュニケーションには少なくとも以下の3つが見られます。
夫婦といえども別人格です。意見や考え方が違うのは当然のことです。大切なのは、違いをなくすことではありません。違いがあることを前提に、違いを受け入れた上で、折り合いをつけることです。
私がカウンセリングでよく口にするのは、「お互いが折り合える地点への着地を目指しましょう」「着地する話し合いができる関係を作りましょう」です。
お互いの違いを尊重し、理解し合える関係が築ければ、多少のすれ違いや意見の食い違いがあっても、それを乗り越える力が生まれます。
カウンセリングでは、カウンセラーが触媒(お互いの気持ちや考えを引き出し、関係がスムーズに動き出すきっかけ)となって、悪循環を良循環に変えるサポートを行います。
上記の例であれば、以下のようなコミュニケーションが取れるようにサポートするかもしれません。
もちろん、これで解決するわけではなく、最初のステップに踏み出す準備ができたに過ぎません。しかし、一度にすべてを解決するのは困難です。まずは、解決に一緒に向かう態勢を整えることです。
態勢を整えて、実際に一歩ずつ進んでいく2人をサポートするのがカウンセリングです。興味を持たれた方は、一度お試し下さい。