不倫・浮気の原因になりうるもの

執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士

険悪な夫婦のイメージ

「なぜ、男は(女は)不倫するのですか?」と聞かれることがたまにあります。原因になりうるものをあげてみます。ただし、不倫・浮気の原因は複合的で、一つに絞られるものではないことをお断りしておきます。

コミュニケーションの問題

パートナーとの関係において、愛情や理解、サポートが欠けていると感じるとき、他の人にそれらを求めることがあります。例えば、以下のようなときです。

コミュニケーションの問題
  • 喜びや悲しみ、不安などの感情を互いに打ち明けられない。
  • 互いの趣味や関心事について話し合う機会がない。
  • 日常的な感謝や謝罪の言葉が少ない。
  • 意見が異なる際に、建設的な議論ができない。
  • 家事や育児などの役割分担について十分に話し合えていない。
  • 収入や支出、貯蓄などについてオープンに話せない。
  • お互いの家族や友人関係について十分に知らない。
  • 夢や目標、人生設計について一緒に考える機会がない。
  • 仕事や人間関係のストレスを打ち明けられない。
  • コミュニケーションがない。
  • お互いに悪感情を抱いている。
  • 家庭が落ち着く場所ではなく、緊張と不安の場になっている。
  • モラハラ・DV(に相当すること)を受けている。

不倫・浮気が、これらの心理的な苦痛の痛み止めとして作用しているケースがあります。不倫・浮気を正当化するものではありませんが、批判するだけでは解決しないケースがしばしばあります。

性的な不一致

性的な不一致(性の志向など)が原因になることがあります。

性的不一致
  • 一方が性的な欲求を強く持っているのに対し、もう一方はそれほど性的な興味がない場合。
  • 性的な要望や欲求を上手く伝えられない、あるいは相手の要望を理解できない場合。
  • 加齢、病気、ストレスなどの要因により、性的な機能や欲求に差が生じる場合。
  • 性に対する過去の傷つき体験、恐怖心、罪悪感、自信のなさなどの心理的な要因。
  • 夫婦・カップル間の信頼関係や結びつきが弱い場合。
  • 性的嗜好が合わない場合。

自尊感情の問題

他の人からの関心や愛情を得ることで、自分の価値を再確認し、自己評価を向上させようとすることがあります。特に自己評価が低い人は、外部からの承認を求める傾向があります。不倫・浮気相手からの肯定的な反応が、自己肯定感を満たす手段として機能することがあります。

偶然の機会や誘惑

環境や状況が不倫や浮気を容易にする場合があります。例えば、仕事上の出張や、SNSなどによる新しい出会いの機会の増加などが該当します。また、お酒は判断力を低下させます。お酒が加わると不適切な行動をとりやすくなります。

軽い気持ち

軽い気持ちで不倫をされたらたまりません。しかし、軽い気持ちでする人は少なくありません。男性に多く見られます。男性は女性より不倫・浮気に対して寛容な傾向があります。以下の背景が考えられます。

  • 男性優位の歴史的・文化的背景
    • 長年続いた家父長制社会の影響
    • 武士社会や遊廓文化など、男性の複数の性的関係を容認する歴史的背景
  • 男性中心の社会構造
    • 男性中心の企業文化や政治構造
    • 女性の経済的自立の遅れ(改善傾向にあるが、依然として格差が存在)
  • メディアの影響
    • 男性の浮気を美化または軽視する傾向のある映画やドラマの存在
    • 女性の不倫に対してより批判的な報道の傾向
  • 教育と社会化
    • 性役割に関する伝統的な教育や社会化プロセス
    • 性教育やジェンダー平等教育の不足

近年では社会の変化とともに、これらの傾向にも徐々に変化が見られつつあるようです(期待を込めて)。しかし、日々夫婦のカウンセリングを行っていると、この意識差は存在すると感じざるを得ません。アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)として存在していると思います。

アンコンシャスバイアスは女性差別的な文脈で取り上げられる機会が多いですが、男性差別的なアンコンシャスバイアスも存在します。双方の文脈におけるアンコンシャスバイアスの例を紹介します。

女性差別的なアンコンシャスバイアスの例
  • 女性はリーダーに向いていないと考える。
  • 女性は家庭を優先すべきだと期待する。
  • 同じ成果でも、女性よりも男性の方が高く評価される傾向。
  • 会議などで女性の意見が軽視されたり、遮られたりする。
  • 女性は理系に向いていないと思い込む。
  • 女性の意見を「感情的」と捉えて軽視する。
  • 「女らしく」あるべきだと思う。
男性差別的なアンコンシャスバイアスの例
  • 男性は育児に不向きだと考える。
  • 男性は感情を表に出すべきでないと期待する。
  • すべての男性が力仕事をこなせると期待する。
  • 男性はメンタルヘルスの問題を抱えるべきでないと考える。
  • 男性は家事が不得意だと思い込む。
  • 男性が育児休暇を取ることに否定的な態度を取る。
  • 男性は攻撃的で暴力的と考える。
  • 男性は仕事を最優先すべきだと期待する。
  • 「男らしく」あるべきだと思う。

これらのバイアスは、社会や個人に深く根付いていることが多く、女性男性の双方に悪影響を及ぼす可能性があります。また、これらのバイアスは互いに関連していることも多く、例えば「女性は家庭を、男性は仕事を優先すべき」というバイアスは、両性に対して制限的に作用します。

アンコンシャスバイアスの解消には、教育、多様性の推進、そして個人レベルでの自己認識と改善の努力が必要です。以下のページでアンコンシャスバイアスを掘り下げて説明しています。

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