「不倫は繰り返される」は真実なのか

執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士

「不倫をした人は、必ず繰り返す」。 SNSを開けば、こうした言葉が目に飛び込んできます。 一度過ちを犯した人は変われない。そんな断定的な言葉に触れ、心を痛めている方もいらっしゃるでしょう。

しかし、夫婦カウンセラーとして多くのご夫婦と向き合ってきた私の感覚では、不倫を深く悔い、行動を改め、以前より誠実な関係を築き直す方も決して少なくありません。

「不倫は必ず繰り返す」という言葉は、どこまでが事実なのでしょうか。

今回は、不倫の再犯に関するデータや心理的な背景、行動変容の可能性について、専門的な視点から考えていきたいと思います。

データから見る不倫の再犯率

まず、不倫の再犯に関する大規模な日本国内の学術調査や公的統計は、現時点ではほぼ存在しません。不倫という行為の性質上、正確なデータを収集すること自体が極めてむずかしいからと考えられます。

しかし、海外のいくつかの研究からは興味深い傾向が報告されています。

アメリカの調査では、既婚者の婚外セックスの生涯リスクは約20%とされています。

While the lifetime risks for infidelity in marriage have generally run around 20 percent.

Psychology Today, Is a Partner Who Has Cheated Likely to Cheat Again? 

未婚で真剣な恋愛関係にある若年層(18歳から34歳)を対象にした調査では、44%が婚外交渉を経験したと報告されています。

Forty-four percent of this sample reported having had sex with someone other than their present partner in one or both of the relationships studied.

Psychology Today, Is a Partner Who Has Cheated Likely to Cheat Again?

さらに、大学生を対象にした研究では、60%から75%が関係外での性的関与を経験しているとされています。

Additionally, 60% to 75% of college students report partaking in some type of extradyadic (i.e., with a person outside of the relationship dyad) involvement while in a serious romantic relationship.

Barta, W. D., & Kiene, S. M. (2005). Hungry for Love: The Influence of Self-Regulation on Infidelity. ResearchGate.

また、デンバー大学の研究チームによる縦断的研究では、一度不倫をした人は次の関係でも不倫をする可能性が3倍高いことが報告されています。

Someone is three times more likely to cheat if they have cheated in the past.

University of Denver, Once a Cheater, Always a Cheater?

過去にパートナーから不倫された、あるいは不倫を疑った経験がある人も、次の関係で同じような経験をする可能性が2〜4倍高いとされています。

A person is two to four times more likely to be cheated on if they have been cheated on or have suspected cheating in a prior relationship.

University of Denver, Once a Cheater, Always a Cheater?

実際、最初の関係で不倫した人のうち、2回目では不倫をしなかった(と報告した)人の方が、再び不倫したと報告した人よりもわずかに多かった

In fact, slightly more people who had cheated in the first relationship studied did not report cheating in the second.

Psychology Today, Is a Partner Who Has Cheated Likely to Cheat Again?

これらのデータは、「不倫は繰り返す」という言説に一定の根拠を与える一方で、「人は変われる(不倫を繰り返さない・行動を改める)」という希望も同時に示しています。

「不倫を深く悔いて改める人は少なくない」という私の実感は、上記のデータとも一致しています。真の後悔は行動を変える強力なモチベーションになります。

夫婦カウンセリングが果たす役割

不倫問題の再発防止や関係修復において、夫婦カウンセリングは有効な支援になります。不倫のカウンセリングの詳細については以下のページをご覧下さい。

いくつかの調査では、カウンセリングを受けたカップルの60%以上が関係改善を報告しています。

Studies show varied outcomes, with some suggesting that over 60% of couples who undergo therapy after infidelity report improvement in their relationship.

Miami Psychology Group, Effectiveness of Couples Therapy Post-Infidelity

大規模なオンライン調査によると、浮気をした配偶者が裏切られたパートナーが尋ねたすべての質問に答えたカップルでは、86%が結婚を継続し、72%が信頼を回復しました。

One large online study found that couples in which the unfaithful spouse answered all of the questions that the betrayed partner asked, 86% remained married and 72% rebuilt trust.

Research-based Approach | Affair Recovery

これは重要な指摘なので、少し脇道に逸れますが触れておきます。

パートナーの質問に言葉を濁す方は一定数いらっしゃいます。理由は「本当のことを話すとパートナーがさらに傷つくと思うから」と「自分を守りたいから」の2つが大半です。

その場は言葉を濁して逃げられても、後から少しずつ新たな事実が出てくることが多いものです。どこかで矛盾が生じるためです。

そうなると、ますます信頼が失われます。本当にすべてを打ち明けたとしても、パートナーは「まだ隠していることがあるのでは」と疑念を抱きやすくなります。それはやむを得ない反応です。結果として、修復の難易度が上がります。

パートナーがすべてを知りたいと思うのには、主に2つの理由があります。

1つ目は、曖昧なままでは前に進めないからです。前に進むどころか、スタートラインにも立てない感覚を持つ方が多いです。

2つ目は、信用して良いかどうかを判断するためです。ある程度の証拠を把握している場合、相手が真実を話すかどうかも、別れるか修復するかを決める材料になります。

自分に非があるとはいえ、すべてを話すのが怖い気持ちは理解できます。しかし、関係の回復を目指すのであれば、勇気を出してすべてを伝えることが望ましい場合が多いです。

2人きりで話すのがむずかしい場合は、カウンセリングの利用をおすすめします。言葉は少しきついかもしれませんが、「炎上を最小限にしながら話し合いを進める」ことができます。

最後に

「不倫は繰り返される」という言葉には一定の傾向があります。しかし、それは絶対的なものではありません。

不幸にもパートナーの不倫が発覚して、それでも関係の回復を目指してがんばっているときに、SNSで「不倫は繰り返される」という言葉を見ると、心が折れそうになるかもしれません。

友人に「不倫男は絶対に繰り返すから、キッパリ別れるほうがいいよ」と言われて、もう誰にも相談できないと孤立感を味わうこともあるでしょう。

SNSも友人も、あなたの人生の責任を取ってくれません。自分の人生の責任を取れるのは自分自身のみです。もし今、不倫問題に苦しんでいるなら、専門家の支援も検討してください。

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