【話し合いの仕組み作り】親密さと関係を育てるコミュニケーション(7)

執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士

(1)から(6)では、コミュニケーションのスキルに焦点を当てて話を進めてきました。今回は夫婦のコミュニケーションスキルを最大限に活かすための「話し合いの仕組み作り」について考えていきたいと思います。

スキルだけでは不十分

これまで、コミュニケーションのスキルに焦点を当てて話を進めてきました。しかし、スキルだけでは十分ではない場合があります。例えば、忙しい時間帯に話し合いをするとき、食事の支度をしながらの会話、または他の作業をしているときなどです。

そうした状況では、気持ちが急いでいたり、イライラしやすかったりするため、安心して話すことがむずかしくなります。これは、かえって関係を悪化させる可能性もあります。

今回は、夫婦のコミュニケーションスキルを最大限に活かすための「話し合いの仕組み作り」について考えていきたいと思います。

安全な話し合いの環境(時間と場所の枠)を作る

共働きや子育て中の家庭は、平日に話し合いの機会を持つのがむずかしいかもしれません。その場合、例えば、毎週土曜日の10時から30分間を話し合いの時間と決めて、スケジュール帳に記入します。

何らかの作業中のとき、明日に備えてそろそろ寝なくては、など時間に追われている状況では、ちょっとしたことでもピリピリ・イライラしがちです。場が安全でなければ、心の内を安心して話すことができません。

話し合いに集中できる時間を設定・確保するのが望ましいです。

また、自宅以外の場所で話し合うことも有効です。自宅ではヒートアップしやすい会話も、カフェなどオープンな場所では、落ち着いてできるものです。

話し合いのテーマと目的を明確にする

事前に、話し合いで取り上げたいテーマや目的を明確にしておきましょう。テーマや目的が不明確なまま話し合いを始めると、話が散漫になり、結局は何も解決せずに終わることがあります。

テーマ

1回の会話の中で複数のテーマが話されると、聴き手はポイントの理解がむずかしくなります。話し手は理解されない。聴き手は理解できない。双方ともにストレスがたまり、ピリピリした空気になることがあります。

テーマを明確にするにはメモが有効です。これをテーマにしたいなあと思ったらメモしておきます。メモを読み返して、それについて何を話したいのか考えます。繰り返すと整理が進みます。テーマが明確になっていきます。

目的

話し合いの目的を定めることで、何に焦点を当てて、何を達成しようとしているのかが明確になります。

また、話し合いの目的を定める際には、期待される結果についても考えておきましょう。どのような結果が得られれば、話し合いが成功だと言えるのかを具体的に想像することで、目標に向かって話を進めることができます。

話し合いのルールを設定する

話し合いのルールとは、例えば、「一人が話している間は他方は口を挟まずに聞く」「一度に話す時間を5分以内に制限する」などです。お互いに公平に話す機会を持ち、話が一方的にならないようにします。

怒りが障害となっている夫婦の場合、怒りに関するルールを決めておくのが望ましいです。

自分の怒りの強さを10段階で評価します。7を超えると冷静な話し合いが困難と判断できるなら、5を超えそうなタイミングで相手にサインを出して、話し合いを中断するなどのルールを決めておきます。

ただし、怒りが障害となっている場合は、ある程度コントロールできるまでは、話し合いはカウンセリングの場だけにするというケースもあります。

ルールの目的は、(1)から(6)までの投稿で紹介した、伝え方・聴き方を実行するためです。むずかしそうだなと感じる方は、最初はカウンセラーのサポートを得ながら構築していくことをオススメします。

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